スタッフコラム Vol.1 – 本物を知れ。

川畑隆一(コンサルタント)

本物を知れ。

30年くらい前に今のホンダの元CEO藤沢武夫さん※1が講演でこんなことを話していました。

「本物を知れ。本物を知らないと贋物と本物の区別がつかない」

高校生のころ友人がアマチュアのフィルハーモニー管弦楽団でバイオリンを担当していて定期演奏会によく招かれていました。当時はクラシック音楽を聞くのが唯一でしたので、演奏会が終わる度に結構感動していました。

1970年代ニューヨークフィルオーケストラで小澤征爾がタクトを振り、ドボルザークの「新世界より」と武満徹の「ノベンバーステップ」を演奏するチケットが手に入ったとのことで叔母と私で行きました。

「ニューヨークフィル」「ドボルザーク」「新世界より」は知っていましたが、武満徹?ノベンバーステップ? なんのこっちゃ 当時はインターネットが無く、平凡社の百科事典を見ても項目も説明もなく、良く分からず上野文化会館の2階席の一番前の席に着きました。ドボルザークの「新世界より」の演奏が始まった途端度肝を抜かれました。

弦楽器の響き、歯切れのいい管楽器、打楽器の鮮やかさ、「今まで私の聞いていたクラシックはなんだった」比較すると分かるもんですね。本物を知るとアマチュアの下手さが分かるもんですね。常にアマチュアのフィルハーモニーだけを聞いているとこれが素晴らしいと思うようですね。

ちなみに、武満徹の「ノベンバーステップ」は凄かったですね。

尺八の横山勝也、琵琶の鶴田錦史の鬼気迫る演奏、今でも残像があるぐらい自由奔放のようで調和が取れていました。二度とこんな人達は現れないでしょう。

さて、絵でも同じような事がいえます。

国立西洋美術館のルノアールの「木かげ」を実際に見た事があります。目の前では緑の集まりでしか見えません。「ここから見てください」と3メートル離れた所に線が引いてあました。そこに立っていると道に新緑の木々が被さっています。

その遠近感を自由に描いている作品に本当に驚きました。これが本物の絵ですね。

一度ご覧頂けたかたは同じ感動されたと思います。

以前、銀座通りで絵画の即売会と称して、一作品100万円程度で呼び込み販売していた詐欺集団がいました。新聞やTVで放送され、逮捕者が出て今はありません。

銀座通りで人を捕まえて、有望な若手で今後価値が上がるということで、投資目的で絵の購入を勧めていました。

実際に絵画を見たことはありますが、まあ素人に毛が生えた位の彩り鮮やかですが貧相な絵の印象でした。

二束三文の安い絵と本物の絵の真贋を分からない人は騙されていたようです。

本物の二束三文の安い絵と高い絵は真贋できますが、本物を見ないで二束三文の安い絵ばかり見ていると贋物がわかりません。

ホテルもそうですね。一流ホテルに宿泊すれば、安いホテルとの比較はできるが、常に安いホテルに宿泊しているとこれで満足してしまいます。

音楽や絵だけでなく、人も本物と贋物がいますね。

常に本物の人と付き合うことが偽物の人かどうかの見極めもつきますね。


※1:藤沢武夫
自動車メーカー大手のホンダCEO。本田宗一郎の ビジネスパートナーとしてホンダの成長を経営面から支えた人物。技術開発は本田 宗一郎が担当し、経営は藤沢武夫が受け持つという二人三脚でホンダを世界的企業に成長させた。