包括連携協定とは?企業が参加するメリット・課題と解決策を解説
近年、各都道府県で地方自治体が民間企業と包括連携協定を結ぶ事例が増えています。自治体と民間企業が協力し合うことで、地域住民の暮らしを豊かにすると同時に、協定を結ぶ企業にも多くのメリットがあります。
包括連携協定とはどういう協定なのか、作られた背景やメリットをまとめました。課題や起こりやすい失敗を踏まえたうえで、成功させるためのコツや包括連携協定の事例も紹介します。
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目次
包括連携協定とは?
包括連携協定とは、地域が抱えている包括的な課題に対して自治体と民間企業が協力し、解決を目指すための協定です。地域の課題は福祉、環境、防災からまちづくりまで多岐に渡ります。
地域の課題解決に民間企業が持つノウハウや最新の技術が取り入れられることで、市民サービスの向上や地域の活性化に役立てられています。
包括連携協定では、自治体と民間企業が意見交換し、考えをすり合わせながらプロジェクトを遂行することが基本姿勢として求められます。
包括連携協定が作られた背景
従来の官公庁では公平性や地元住民に向けた透明性を重視し、民間企業との関わりは限定的でした。
民間企業と地方自治体が連携し、課題解決に向けて取り組む包括連携協定が生まれた背景には、次の3つの理由があります。
理由①大規模な自然災害の頻発
包括連携協定が生まれた背景には、自然災害の頻発が理由の1つとして挙げられます。
自然災害が起きた時、自治体では住民の安全と生命を守るため、すみやかな行動と対策が必要です。
- 救援物資の供給
- 避難場所の提供
- 災害情報の提供
- 住民とのコミュニケーション
そして、さらなる被害拡大防止のために、一刻を争う迅速なやりとりや情報提供が求められます。
自治体の行政職員だけでは人員が不足し、情報の提供が間に合わないケースもあることから、民間企業との協力が生まれました。
地震や台風、水害などの自然災害の際に、すみやかに住民の安全を確保し最新の情報提供を行うため、民間企業の技術や人員が活かされたのです。
たとえばイオン株式会社では、防災に関する包括連携協定を結んでいます。
「各地域で災害が発生した場合に、物資の供給や避難場所の提供などを行うほか、イオンの店舗での特産品フェアや観光PR、地域の農産品を使ったお弁当の共同企画などを実施。こうした取り組みを通じて地域経済の活性化や生活サービスの向上などに寄与しています。」
このように人命と地域の資産を守るため、自治体と民間企業が提携し、災害時の食料提供、店舗を避難所として開放するなどの取り組みが行われています。
理由②自治体職員の人手不足
現在日本は年々少子高齢化が進んでおり、若い働き手や将来の担い手が減っている状況です。
自治体においても同じ状況にあり、 行政のみでは人手不足が心配される中、民間企業と連携し行政の業務の効率化を目指すことも、包括連携協定の目的です。
理由③新しい行政サービスへのニーズ
現代では毎年新しい技術が生まれ、5年、10年前には考えられないような革新が起きています。
これまでにもスマートフォンの普及による通信手段の多様化、グローバル化、新しい文化の浸透などから、住民の考えやニーズは変化してきました。
時代に合わせた新しい行政サービスを作るために、民間企業の技術や実績が重宝されているのです。
新しい技術に詳しい民間企業の意見を取り入れてサービスを改善することは、子育て世代などの若い世代の移住などの地域活性化にもつながっています。
包括連携協定を締結するメリット
包括連携協定を結ぶことは、自治体と民間企業の双方にさまざまなメリットがあります。
今や47都道府県のほとんどが民間企業と包括連携協定を結び、行政サービスの向上に役立てています。
企業と行政が連携する具体的なメリットを見ていきましょう。
住民の要望に合わせた行政サービスを提供できる
自治体にとっては、最新の住民の希望に沿った行政サービスを提供できるメリットがあります。
柔軟な行政サービスを提供するには、顧客に向けて商売をしている民間企業の情報網が欠かせません。
民間企業と手を組めば、行政のみでは気づいていなかった課題や住民のニーズに気づくための視野の拡大が見込めます。
従来の入札制度では自治体があらかじめ決めた計画、予算を元に事業を進めていくため、あまり民間企業が介入できる部分はありませんでした。
しかし、包括連携協定は自治体と民間企業が初期から議論を重ねて解決を目指します。
「ここはこうしたらさらに成果を出せる」「もっと費用対効果の高いやり方がある」など、お互いにメリットがある解決策の提示や、効率的なプロジェクトの進行ができます。
民間企業にとって宣伝効果が高い
民間企業にとって包括連携協定を結ぶ大きなメリットは、高い宣伝効果が見込める点です。自治体と連携し、地元の課題解決に向けて活動している姿は地域住民から身近に感じてもうことができ、地域の発展をサポートすることで地域全体からの信頼を得られます。
また、民間企業の知名度、技術力向上などの企業の発展にもつながり、地域と企業どちらもさらにより良い方向へと進んでいけることでしょう。
学校・NPO・官公庁など幅広いコラボレーションが可能
包括連携協定は、行政を通じてさまざまな企業や公的機関とのコラボレーションが可能です。
たとえば民間企業が学校教育におけるスポーツ推進のために、施設やスポーツ用品を提供するなど地域の将来につながる包括連携協定が実施されています。
このような取り組みでは、学校と民間企業が協力して課題解決に動いたり、NPO法人の力を借りたりと、行政を元に新しい関係性が生まれ、地域の活性化にもつながっていきます。
包括連携協定における課題
包括連携協定は自治体にも民間企業にもメリットがありますが、それと同時に課題もあります。
包括連携協定で起こりやすい失敗例や、早めに解決したい課題を知っておきましょう。
事前のすり合わせができていない
包括連携協定で特に注意したい課題が、自治体との意識のすり合わせです。
課題解決に向けた業務内容をどちらが担当するか、予算、スケジュールなどの意識の違いに注意しましょう。
たとえば、自治体が「ここまで民間企業がサポートしてくれるだろう」と想定していたラインまで、対応できないというケースも起こり得ます。
締結したものの、お互いの意見のすり合わせがうまくいかず、課題を放置する状況になってしまいます。
協定書の内容が曖昧な状態で締結してしまう
事前のすり合わせができていないまま曖昧な内容で協定を締結してしまうと、大きなすれ違いが生じてしまいます。
十分に話し合う前に締結を済ませてしまった結果、具体的な行動に起こすまで長期間かかる原因になりかねません。
事前にしっかりと意見をすり合わせて、お互いの業務や予算面などの内容を決め、自治体と共にすぐ課題解決に行動できる協定書の作成が必要です。
締結後の具体的な成果が見えにくい
取り組みの結果、具体的にどれくらい変化があったのか見えづらい点も包括連携協定の課題の一つ。
たとえば、観光の振興に向けて観光地の展示物の見直し、特産品の販売促進を行ったとします。
その結果、売り上げの推移や観光客数の増加などデータで見える取り組みであれば、締結後の変化が目で見て判断可能です。
しかし、防災の連携では売り上げや観光客数の増加などと違い、数字で成果がすぐにわかるものではありません。
成果が見えないことが、自治体との結びつきが弱まったり、活動が衰えたりする原因になることがあります。
民間企業にとって収益性が低い
包括連携協定は、民間企業が無料か低予算でサポートをするケースが多くあります。
収益性が低いまま、民間企業がボランティアのような状態で行政の課題解決に取り組むことは、金銭的な負担が大きくなる一方です。
自治体が民間企業に支払う予算をしっかり確保できないのであれば、課題解決のためのプロジェクトが民間企業の収益アップにつながるプランを考えなければいけません。
収益を確保できないことで民間企業の業績が悪化すれば、行政との協定関係を維持できない状況も考えられます。
包括連携協定を成功させるための対策
民間企業が包括連携協定を成功させるには、計画の具体性を高めると同時に収益の確保が重要です。
協定を締結する前に考えておきたい、成功のための対策を紹介します。
具体的なアクションプランまで協定内容を決めておく
協定の内容は曖昧にせず、具体的なアクションプランを考えておくことで、意識のすれ違いを防止できます。
アクションプランとは行動計画書のことで、課題別の改善案や進捗を管理する人物、スケジュールなどを管理する方法などを記載します。
包括連携協定を締結するにあたって、いつ、どこで、どのような規模で行政サービスを始めるのか、スケジュールや予算、必要な人材などを決めておきましょう。
進捗管理者がいることで課題解決に向けた行動が後回しにならず、民間企業と行政の足並みを揃えられます。
自治体の総合計画に沿った協定内容を考える
自治体の総合計画とは、行政運営の最上位計画であり基本的な指針です。
将来、地域をどのような「まち」にしていきたいのか基本構想のもと、行政が実施する計画のことです。
つまり、この総合計画の指針に沿っていなければ、課題解決に取り組んでも本来目指している地域の理想形には近づけません。
課題解決に向けたプランを考える際は、総合計画に沿った協定内容を考えましょう。
教育機関の発展、福祉の人材確保や施設の建設など、その自治体が優先すべき課題をチェックしてください。
そのうえで実績やノウハウのある民間企業として協力することで、自治体全体の発展と課題解決につながっていきます。
民間企業の収益性を確保する
民間企業が収益につながる連携を考えることも重要です。
何年も民間企業がほとんどボランティアのような状態で、行政の課題解決に資金や人材を使っている状況は大きな負担になってしまいます。
そこで、まちづくりや防災などにより、民間企業にも収益性があるプランを検討しましょう。
防災であれば民間企業の商品を学校や公的機関に置いておく、行政の広報でも積極的にPRするなど、売り上げアップにつなげる方法があります。
たとえば締結で知名度が向上し、民間企業の売り上げもアップすれば、互いが利益を分かち合えるWin-Win関係を構築することができます。
包括連携協定の事例
これまでに各自治体と民間企業で実際に結ばれた、包括連携協定の事例を紹介します。
具体的に地域でどのような取り組みが行われているのか、事例を参考に課題解決へ向けたアクションプランを考えてみてはいかがでしょうか。
事例1.千葉県千葉市と株式会社ZOZO
千葉市と株式会社ZOZOは、2019年に包括連携協定を締結しています。
連携事項
(1)魅力を高めるまちづくりの推進に関する事項 (2)文化・教育及びスポーツ振興の推進に関する事項 (3)災害時における対応、防災、防犯に関する事項 (4)地域経済活性化に関する事項 (5)千葉市の施策の推進に関する事項 (6)その他市民サービス向上に関する事項 |
双方の資源やノウハウを活用することで企業と行政の両面から街の個性や魅力を高め、未来へつなぐまちづくりや地域の活性化を目的としています。
引用:株式会社ZOZO、千葉市、千葉大学と包括的連携協定を締結し、西千葉エリアで新たな価値を生み出すまちづくりを目指す
事例2.神奈川県と株式会社LINE
神奈川県と株式会社LINEは、2018年に包括連携協定を締結しています。
連携事項
(1)県政情報発信・広報に関すること (2)相談事業に関すること (3)電子化の推進に関すること (4)災害対策に関すること (5)未病を改善する取組に関すること (6)社会的課題の研究に関すること |
具体的にはLINEを使った相談対応や情報発信を実施し、いじめ相談や児童虐待防止などの相談が気軽にできる環境づくり、防災の情報発信の協力などの取り組みを行っています。
引用:LINE株式会社プレスリリース LINEと神奈川県、および鎌倉市との包括連携協定をそれぞれに締結
事例3.福岡県福岡市とYahoo!株式会社
福岡市とYahoo!株式会社は、 2016年に包括連携協定を締結しています。
共働事業
(1)スタートアップ支援・デジタル人材の育成に関する事項 (2)市政情報等の発信に関する事項 (3)防災・災害対策に関する事項 (4)電子自治体の推進に関する事項 (5)その他市民サービスの向上及び地域活性化に関する事項 |
未来につながる人材育成や、スピーディーな対応が求められる防災、災害の緊急時における情報発信の確保に役立てられています。
引用:Yahoo!JAPANプレスリリース 福岡市とYahoo! JAPAN、包括連携協定を締結
事例4.兵庫県西宮市と大塚製薬株式会社
西宮市と大塚製薬株式会社は、2020年に連携協定を締結しています。
連携・協力事項
(1)健康維持・増進に関する事項 (2)食育に関する事項 (3)防災・減災対策等地域の安全・安心に関する事項 (4)スポーツ振興に関する事項 (5)その他、両者が協議し、必要と認める事項 |
熱中症予防などの健康に関係する啓発協力、食やスポーツを通じた健康づくり、災害時の対応などに取り組んでいます。
引用:西宮市 民間企業等との包括連携協定について
包括連携協定で地域課題の解決に貢献しよう
包括連携協定は、行政だけでは難しい最先端のサービスの提供や人手不足の解消など、地域にとってさまざまなメリットがあります。
一方、企業にとってのメリットは、地域課題の解決に貢献することで地域や自治体からの信頼を獲得できることです。
包括連携協定を通じて、互いが利益を分かち合えるWin-Win関係を構築し、長期的な信頼関係を築きましょう。
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