自治体に飛び込み営業が通用しない理由と発注を獲る接点戦略
自治体への営業では、「まずは担当部署を訪問して話を聞いてもらおう」と考える企業も少なくありません。しかし、実際に飛び込み営業をしても、「資料を送っておいてください」「必要になったら連絡します」と言われ、その後につながらないケースが多く見られます。
こうしたことから、「自治体への飛び込み営業は意味がない」と感じるかもしれません。しかし、飛び込み営業そのものが問題なのではなく、自治体営業ならではの仕組みや担当者の立場を理解しないまま営業活動を行っていることが、案件化につながらない大きな要因です。
そこでこの記事では、自治体への飛び込み営業は本当に有効なのかを整理した上で、案件化しにくい理由や訪問前に準備すべきこと、担当者との関係を築くためのポイントを解説します。
目次
自治体への飛び込み営業は有効か
自治体への飛び込み営業は、民間営業と自治体営業の違いを踏まえて行うことで、有効に働くことがあります。ここでは、以下の3つに整理して解説します。
- 自治体に対する飛び込み営業の有効性
- 民間営業と自治体営業の決定的な違い
- 飛び込み営業のゴールは「受注」ではなく「次回接点」
自治体に対する飛び込み営業の有効性
自治体への飛び込み営業は、完全に無意味というわけではありません。担当者との接触機会を作り、社名・サービスの認知を広げるという点では一定の効果があります。
一方で、飛び込み営業だけで案件が動くことはほとんどなく、それを期待して動くと空振りに終わることがほとんどです。
なぜなら、自治体が物やサービスを発注する仕組みが民間企業とは根本的に異なるため、民間向けの営業手法・ノウハウをそのまま持ち込んでも機能しないためです。
したがって、自治体に対する営業活動は「案件を取りに行く行動」ではなく、「中長期的な関係の入口を開く行動」として位置づけることがポイントです。
民間営業と自治体営業の決定的な違い
自治体に対する営業活動において、理解しておくべき民間企業との違いは、自治体の発注に至るまでのプロセスにあります。
民間企業への営業では、担当者が意思決定者であるか、あるいは短いルートで決裁を上げられるケースが見られます。そのため、担当者との商談が進めば、比較的短期間で受注の可否が判断されます。
自治体では、物やサービスの調達が前年度から検討する予算と連動しています。予算が成立し、発注する際にも契約方法は原則として一般競争入札による競争です。
したがって、飛び込み営業によって自治体担当者が「この会社のこのツールを導入したい」と思っても、予算の使途は前年度に検討した内容から外れることはできず、すぐに発注とはいかないのです。
そのため、自治体営業では担当者への提案だけでなく、「いつ」「どのような情報を提供するか」
飛び込み営業のゴールは「受注」ではなく「次回接点」
自治体への飛び込み営業では、一度の訪問で受注や商談成立を目指す必要はありません。重要なのは、「今後も情報交換したい企業」と認識してもらい、次につながる接点をつくることです。
例えば、
- 他自治体での導入事例があれば共有してほしい
- 最新の技術に関する情報があれば教えてほしい
- 来年度の検討時期に改めて話を聞きたい
といった関係を築くことができれば、その訪問は十分に成果があったと言えます。
自治体営業では、案件が動き始める半年から1年前に情報収集が始まることも珍しくありません。
そのため、継続的に情報提供を行いながら信頼関係を築いてきた企業ほど、担当者から相談や見積依頼を受ける可能性が高くなります。
飛び込み営業は、営業活動のゴールではなくスタートです。まずは担当者との接点を築き、その後の継続的な情報提供につなげることが、案件化への第一歩となります。
自治体への飛び込み営業が案件化しにくい理由
飛び込み営業は、自治体との最初の接点をつくる方法として一定の効果があります。しかし、担当者と面談できたにもかかわらず、その後の相談や案件につながらないケースは少なくありません。
自治体への飛び込み営業を有効に機能させるためには、まず案件化しにくい構造的な理由を正確に把握しておくことが大切です。ここでは、以下の3つについて解説します。
- 自治体が案件を発注する仕組みを理解していないから
- 担当者が求める情報と提案内容がずれているから
- 継続的な関係構築を前提にしていないから
自治体が案件を発注する仕組みを理解していないから
自治体営業では、「良い提案をすれば採用される」という考え方は通用しません。
自治体が事業を発注するまでには、発注の裏付けとなる予算の編成はもちろん、関連する行政課題に関する行政計画の策定・改定、議会での質疑・答弁、首長の選挙公約など、様々な背景があります。
そのため、営業活動を始めるタイミングによって、担当者が対応できる内容も大きく変わります。
例えば、自治体が調達の仕様を決定し、入札を行う直前に接点を獲得できた場合は、自治体に対し新たな提案をすることは現実的ではありません。
一方で、予算要求前に事業実施を検討段階であれば、他自治体の事例や技術情報などが担当者の参考資料となり、自社の提案が仕様に採用される可能性もあります。
つまり、自治体営業では「どのような提案をするか」だけでなく、「いつ提案するか」が同じくらい重要です。
飛び込み営業が成果につながらない背景には、こうした調達スケジュールへの理解不足があるケースも少なくありません。
自治体営業の全体像については、以下記事で詳しく解説しております。ご興味のある方はぜひご覧ください。
▼自治体営業のやり方とは?難しい理由・営業の流れやコツを解説
https://www.b2lg.co.jp/jichitai/chihoujichitaieigyoukiso/
担当者が求める情報と提案内容がずれているから
自治体の担当者が民間企業に期待する情報は、商品パンフレットや企業の実績紹介ではありません。自治体担当者が本当に求めているのは、「自分たちが抱える課題に対して、どんな手段があり得るか」といった情報です。
自治体の担当者は、上司や財政課に対して「なぜこの事業を来年度予算に盛り込む必要があるか」を説明しなければなりません。そのための根拠材料が、担当者にとって最も価値ある情報です。
自社の製品・サービスの説明に終始する営業は、担当者の課題感とずれており、「また売り込みか」と受け取られることがあります。
継続的な関係構築を前提にしていないから
飛び込み営業が案件につながらない理由として、訪問後のフォローが行われていないことも挙げられます。
自治体では、初回訪問から数か月、場合によっては1年以上経ってから案件が動き始めることもあります。そのため、一度訪問しただけで案件化を期待するのは現実的ではありません。
例えば、訪問後に話題となった資料や他自治体の事例を提供するだけでも、担当者の印象は変わります。
さらに、担当部署に関係する情報を継続的に提供することで、「困ったときに相談できる企業」という認識を持ってもらいやすくなります。
自治体営業では、案件が公表されてから営業を始めるのではなく、その前から担当者との信頼関係を築いておくことが重要です。
飛び込み営業の前に準備すべきこと
飛び込み営業を継続的な関係につなげるためには、事前の準備が必要です。ここでは、以下の4つについて解説します。
- 訪問先部署を正しく選定する
- 総合計画・個別計画から課題を把握する
- 予算編成スケジュールを確認する
- 他自治体事例を準備する
訪問先部署を正しく選定する
自治体への飛び込み営業で最初に重要なのは、どの部署を訪問するかの選定です。
総務課や秘書課に持参しても、担当者につながることはほとんどなく、時間と労力を消費するだけです。
担当部署を誤ると、「担当外なので分かりません」と案内され、十分な情報交換ができないまま終わる可能性があります。
訪問前には自治体ホームページで組織図や業務分掌を確認し、自社の商品・サービスと最も関係の深い部署を整理しておきましょう。
総合計画・個別計画から課題を把握する
訪問前に、その自治体が公表している総合計画や分野別計画を確認することが有効です。
総合計画には、自治体が今後5〜10年で実現しようとしている目標と施策の方向性が明記されており、どの領域に力を入れているかが読み取れます。
また、事業分野別の個別計画はさらに具体的です。例えば「令和○年度までに申請手続きの電子化を95%にする」と計画に記載されていれば、その自治体はデジタル化支援に対する一定のニーズがある可能性があります。
担当者との面談でも、「総合計画では○○を重点施策として掲げていますが、その取組状況はいかがでしょうか」といった切り口で話を始めることができ、商品説明だけの営業になりにくくなります。
予算編成スケジュールを確認する
飛び込み営業のタイミングは、自治体の予算サイクルに合わせて設定することが効果的です。自治体の予算要求は、多くの場合10月頃から各課から財政課へ行われます。つまり、その前の4〜9月は担当者が「来年度に何をするか」を考えている時期に当たります。
この時期までに情報を提供し、担当者の頭の中に「こういう方法がある」という認識を植え付けることができれば、予算要求する事業の中に提案した仕様が盛り込まれる可能性があります。
一方で、予算要求内容が確定した12〜3月の年度末は、議会対応・予算成立・年度末業務で担当者が多忙なため、新規の提案活動には適していません。
この時期は継続的な情報提供に留め、翌年度の活動に備える時期と捉えることが適切です。
自治体の予算編成スケジュールについては、以下記事で詳しく解説しております。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
▼自治体の予算取りのスケジュールとは?予算編成プロセスについて解説
https://www.b2lg.co.jp/jichitai/local_government_budget/
他自治体事例を準備する
飛び込み営業で最も価値を感じてもらいやすい情報の一つが、他自治体の事例です。
自治体担当者は、新しい施策を検討する際、「他自治体ではどのように取り組んでいるのか」を確認することが少なくありません。
そのため、自社商品の説明だけではなく、
- どの自治体で導入されたのか
- 導入前にはどのような課題があったのか
- 導入後にどのような成果が得られたのか
- 導入時にどのような工夫をしたのか
といった情報を整理しておくと、担当者にとって有益な情報提供になります。
自治体への飛び込み営業で信頼関係を築くポイント
例えアポイントなしの飛び込みであっても、担当者に「また話を聞きたい」「困ったときに相談したい」と思ってもらえれば、その後の情報提供や相談、見積依頼につながる可能性が高まります。
ここでは、飛び込み営業で担当者との信頼関係を築くために意識したい3つのポイントとして3つ解説します。
- 他自治体事例や制度動向など価値ある情報を提供する
- 商品説明ではなく課題や取組状況をヒアリングする
- 次回接点を自然に提案する方法
他自治体事例や制度動向など価値ある情報を提供する
自治体担当者にとって、営業担当者と面談するメリットは「普段は得られない情報を収集できること」にあります。
そのため、訪問時には「商品説明」ではなく「担当者にとって役立つ情報を提供すること」を意識しましょう。
例えば、他自治体で同様の課題に取り組んだ事例、民間企業の最新の取組事例などは、担当者が事業を検討する際の参考になる情報です。
こうした情報を提供することで、「営業に来た企業」ではなく、「情報を持ってきてくれる企業」という印象を持ってもらいやすくなります。
また、自社サービスを紹介する場合でも、「この自治体にも導入しませんか」という伝え方ではなく、「他自治体ではこのような方法で課題を解決しました」という事例を交えて説明する方が、担当者は具体的なイメージを持ちやすくなります。
商品説明ではなく課題や取組状況をヒアリングする
訪問中は、一方的な商品説明ならないように注意が必要です。課題のヒアリングに時間を使うことが重要です。
「現在、この業務はどのような形で対応されていますか」
「今後の計画の中で、この領域について課題感はありますか」
といった問いかけによって、担当者の現状認識・課題感・優先順位を把握することができます。
担当者が話しやすい雰囲気を作り、業務実態を引き出すことが目的です。ここで得た情報は、その後の提案内容を担当者の実情に即したものにするための素材となります。
もちろん、ヒアリングに終始するのではなく、担当者の発言に対して「同様の状況にある他の自治体では〜という対応をとっているケースがあります」と事例で返すことで、対話の質が高まります。
次回接点を自然に提案する方法
アポイントのない訪問では、短時間で自社との対話に関心を持ってもらうことと同時に、次回の接点につながるアクションを提案することが大切です。
例えば、「本日お話しした○市の事例の資料をお送りします。」といった提案であれば、担当者に負担を与えず、継続的な関係を築くきっかけになります。
一方で、「来週また訪問します」「すぐに提案書を作成します」といった、自社都合の提案は避けた方がよいでしょう。自治体の検討状況・時期に合っていなければ、担当者の負担となり、かえって関係構築を妨げる可能性があります。
自治体への飛び込み営業を案件化につなげる継続アプローチ
自治体への飛び込み営業は、それ限りでは完結しません。その後の動き方が、案件化の成否を左右します。ここでは、案件化につなげるためのポイントとして以下の4つを解説します。
- 面談後に必ず行うべきフォロー
- 情報提供を継続する重要性
- 予算要求時期を狙った再接触
- 案件化の兆候を見極めるポイント(見積依頼等)
面談後に必ず行うべきフォロー
面談が終わった後は、できるだけ早くお礼の連絡を行いましょう。
その際には、お礼だけで終わらせるのではなく、面談中に話題となった資料を併せて送付し、次の対話につなげることが重要です。
一方で、資料送付後に何度も電話をかけたり、短期間で繰り返し訪問したりすると、担当者の負担となる可能性があります。
フォローは継続的に行うことが大切ですが、相手の状況や業務量にも配慮しながら進めましょう。
情報提供を継続する重要性
初回訪問後は、定期的な情報提供によって継続的な接点を持ち続けることが重要です。
例えば、他自治体で新たな導入事例があった場合や、新たな技術が開発された場合、法改正による対応が発生する場合に、情報提供することが考えられます。
こうした情報を定期的に提供することで、担当者は「事業に必要な情報・知見を持っている企業」と認識してもらえる可能性が高まります。
営業色を前面に出すよりも、担当者の業務に役立つ情報を届けることを意識した方が、長期的な信頼関係を築きやすくなります。その信頼関係は、自治体が事業に向けた市場調査を行う場合、見積を取得しようとする場合に声が掛かることにつながり、結果、事業提案の機会の創出につながります。
予算要求時期を狙った再接触
継続的な情報提供を続ける中でも、特に意識したいのが予算要求の時期です。
自治体では、新年度事業の検討が始まる時期になると、担当者は情報収集や事例調査を行うことがあります。
そのタイミングで再度訪問したり、情報提供を行ったりすることで、以前より具体的な相談につながる可能性があります。
一方で、事業内容や仕様が固まった後では、新たな提案を取り入れることは難しくなります。
そのため、「前回訪問から時間が経ったから連絡する」のではなく、「担当者が情報を必要としている時期に連絡する」という考え方が重要です。
自治体営業では、営業する頻度よりも、営業するタイミングが成果を左右します。
案件化の兆候を見極めるポイント
継続的な接触の中で、案件化が近づいているサインを見極めることも重要です。具体的には、以下のような変化に注目します。
- 担当者から費用感・予算規模について質問が来た場合
- 仕様書の作成や提案書の提出を求められた場合
- 担当者が課長・部長を交えた会議への参加を打診してきた場合
- 見積もりの提出を求める連絡が来た場合
こうした兆候があった場合、自治体側のニーズに合わせて事業化を進めやすくなる資料や情報を提供することが重要です。
担当者との信頼関係を維持しながら、事業の検討状況に合わせて情報提供を続けることで、相談や見積依頼、さらには案件化へとつながる可能性を高めることができます。
まとめ
自治体への飛び込み営業は、「飛び込み営業をするかどうか」ではなく、「自治体の仕組みを理解した上で、どのような営業活動を継続するか」が成果を左右します。
一方で、自治体ごとの組織体制や予算編成の時期、調達手続きは異なるため、自社だけで最適な営業戦略を組み立てることが難しい場面も少なくありません。
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