自治体

自治体の人口減少対策とは?具体的な取り組みや事例についても解説

全国的に人口減少が進む中、自治体は様々な施策を実施しています。

人口減少対策として行われる取組みを詳しくみると、その内容は自治体によって大きく異なります。

そのため、幅広い業種の民間企業にとって、人口減少対策として行われる案件は受注のチャンスが期待できます。

そこで本記事では、自治体の人口減少対策が重視される背景・業務類型・案件の特徴と、民間企業が参入する際のポイントを解説します。

自治体で人口減少対策が重視される背景

多くの自治体で人口減少を受けた施策が行われています。その背景を以下の4つの観点から解説します。

  • 全国的な人口減少・少子高齢化の進行
  • まち・ひと・しごと創生戦略による制度化
  • 近年の地方創生施策の一部としての位置づけ

全国的な人口減少・少子高齢化の進行

日本の人口は2004年の1億2,784万人をピークに減少局面に入り、2030年には1億1,522万人、2050年には9,515万人と予想されています。

(出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ 概要(平成23年2月21日国土審議会政策部会長期展望委員会))

市区町村の多くで人口が減少しており、学校統廃合・公共施設の維持困難・介護人材不足など、行政運営の根幹に関わる問題が顕在化しています。

人口減少は、税収減と社会保障費の増大が財政悪化につながる可能性があり、「人口減少対策」は自治体における重要課題として認識されています。

2014年「増田レポート」以降の政策的注目

2014年に日本創生会議(座長・増田寛也氏)が公表した「消滅可能性都市」に関するリスト(いわゆる増田レポート)によると、全国の896市区町村が将来的に消滅可能性があると指摘し、社会的な衝撃をもたらしました。

この発表以降、人口減少は「遠い将来の問題」ではなく「今行動しなければ手遅れになる問題」として政策立案の最前線に上がるようになりました。

国は2014年に「まち・ひと・しごと創生法」を制定・施行し、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しました。これを受けて都道府県・市区町村はそれぞれ「各自治体版まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定が求められ、各自治体は独自の人口ビジョンと総合戦略を定めることになりました。

この計画は、現在も多くの自治体で名称や法律上の位置付けに修正を加えながら定期的に改定されています。計画に施策の方向性が記載されているため、民間企業にとっては将来発注される業務の有力な情報源となり得ます。

近年の位置づけ:地方創生施策の一部として実施

こうした経緯から、人口減少対策の取組みは、各自治体のまち・ひと・しごと創生総合戦略において分野別の取組みに落とし込まれています。

したがって、人口減少対策の案件はその名称に「人口減少」と冠しているものだけでなく、子育て施策・産業支援施策・まちづくり施策などでも、取組みの位置付けを遡ると実は人口減少対策の要素を含む取組みが多数存在します。

自治体が実施する人口減少対策の業務分野

上述のとおり、人口減少対策は移住を促進して直接的に人口の社会増を目指すものから、行政サービス・医療福祉・産業の充実を通じて、実現しようとするものもあります。

ここでは、人口減少対策の要素を含む業務として、以下の4つについて解説します。

  • 移住・定住促進
  • 子育て・教育施策
  • 地域産業・雇用創出
  • 人口減少社会への適応施策

なお、「移住・定住促進」「地域産業・雇用創出」など、ここで取り上げる施策の多くは、自治体の地域活性化施策とも重なります。地域活性化の取組み全体については、「自治体の地域活性化とは?民間企業が参入できる事業分野を解説」もあわせてご参照ください。

移住・定住促進施策

移住・定住促進施策は、PRや補助金等を組み合わせることで、他の地域から人口流入を促し人口の社会増を狙うものです。

主な施策内容としては、移住補助金・空き家改修支援、お試し移住プログラム、移住コーディネーターの設置・運営、Iターン等の促進PR、テレワーク移住の促進などが挙げられます。

子育て・教育施策

子育てのしやすい環境づくりは、出生率の維持・向上と若い世代の定住促進の両面から、人口減少対策の重要な柱となっています。

保育所・学童保育の整備・運営、子育て相談支援、医療費助成の拡大、高校の魅力化などが代表的な施策として挙げられます。

民間の保育・教育事業者、子育て支援NPO、ITを活用した子育て支援サービス事業者など多様な民間主体が関与できる分野であり、指定管理・業務委託・補助事業など様々な形での参入機会があります。

地域産業・雇用創出施策

地域に「仕事をつくる」ことは、移住・定住促進と並ぶ地方創生の重要な柱です。

企業誘致(工業団地・産業用地の整備・企業立地補助金)、農林水産業の活性化、商店街・中心市街地の活性化、スタートアップ支援(インキュベーション施設・創業補助金)などが代表的な施策として挙げられます。

民間企業への発注案件としては、各種セミナーの企画・運営、相談センター・スタートアップ支援プログラム運営などがあります。

人口減少社会への「適応」施策

人口減少を抑制するだけでなく、人口が減った社会への「適応」を図る施策も近年重視されています。

コンパクトシティ化、公共施設の統廃合、地域公共交通の再編・維持、ICTを活用した行政サービスの効率化などが代表的な取組みとして挙げられます。

「人口が減っても持続可能なまちをつくる」施策へのニーズが高まっており、都市計画・交通・ITなど多様な専門性を持つ民間企業の参入機会が広がっています。

自治体の人口減少対策案件の特徴

人口減少対策の要素を含む案件に見られる特徴を、以下の4つに整理して解説します。

  • 地方創生関連施策として発注される
  • 対象分野が幅広い
  • 広報・調査・モデル事業など業務内容の多形態性
  • プロポーザル方式での調達

地方創生関連として発注される案件

人口減少対策に関連する自治体案件の多くは、地方創生関連の事業として行われ、国の交付金等が活用されている場合もあります。

国の交付金を活用した案件は、交付金制度の要件に沿った形で業務仕様書が作成されるため、制度の趣旨・仕組みを理解していることが求められます。

一方で、自治体が活用できる国の交付金制度の存在は、多くの自治体で同様の事業が発注される可能性を意味します。

したがって、自社の営業エリアの自治体の動向のみならず、国による全国的な取組みの動向も把握しておくことが重要です。

移住・子育て・地域産業など幅広い分野での発注

人口減少対策の要素を含む案件は、移住・子育て・産業振興・教育・交通など幅広い分野にわたって発注されます。

行政計画では同じ「人口減少対策」の政策方針のもとで、全く異なる業種・業務内容の案件が並存していることが特徴といえます。

したがって、民間企業が参入を検討する際には、自社のコアコンピタンスがどの分野・業務形態に対応しているかを整理した上で、ターゲットとする案件類型を絞り込むことが効率的です。

広報・調査・モデル事業など業務内容の多態性

業務分野も多様であれば、業務内容も多様です。

業務内容を分類すると、移住促進のためのWeb広報・SNS運用・移住セミナー企画運営といった「広報・PR」、人口動態や移住ニーズに関する「調査・分析」、新たな施策を試す「モデル事業」、移住コーディネーター・子育て相談員の配置といった「人材の配置」などに分けられます。

これらの業務内容は、自治体の規模や予算額等に応じて実施に要する工数も異なります。そのため、人口減少対策に関連する業務は幅広い業種・規模の企業にとって参入の機会があると言えます。

プロポーザル方式での調達が多い

取組みの成果や手法が事前に確定しにくいテーマが多いため、価格よりも提案内容・実施手法・実績を重視した企画競争(プロポーザル)方式での発注が見られます。

自治体の人口減少対策事業への参入で知っておきたいポイント

実際に人口減少対策に関連する案件に参加する際に知っておきたいポイントとして、以下の3つを解説します。

  • 「打ち手(各分野の施策)」としての案件が中心であること
  • 自治体ごとに重点施策が大きく異なること
  • 地域要件・実績要件など調達条件への適応

「人口減少対策そのもの」より各分野の「打ち手」案件が多い

「人口減少対策」という包括的なテーマで単一の大型案件が発注されるケースは少ないです。

実際の調達は「移住コーディネーター配置業務」「子育て支援アプリ開発・運営」「空き家バンク整備業務」「○○計画策定支援業務」といった個別施策の形で発注されることがほとんどです。

そのため、自社のサービス・専門性と直接接続できる「個別施策のカテゴリ」を特定し、そのカテゴリでの実績を積み上げることが、参入を進めるポイントとなります。

自治体ごとに重点施策が大きく異なる

人口減少対策の重点施策は、自治体が置かれた地域特性・財政状況・首長の政策方針によって大きく異なります。

農山村地域では移住・農業振興が中心となる一方、中規模都市では子育て支援・産業振興が主要テーマとなる場合もあります。そのため、自治体の背景を踏まえずに、プロダクト先行で同一の提案内容で展開することは、効果的とは言えません。

ターゲットとする自治体の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」「総合計画」を事前に読み込み、その自治体の重点施策と自社サービスの接点を明確にした上で提案を組み立てることが重要です。

調達方式・条件への適応が必要

人口減少対策分野の案件では、調達条件として地域要件(当該都道府県内に営業所を有すること等)や類似業務実績要件(移住支援・地域づくり分野での委託実績)が求められるケースが見られます。

プロポーザル方式は、制度上は競争入札ではなく随意契約の一種のため原則として自治体の入札参加資格者名簿への登録は不要ですが、案件によっては発注者の入札参加資格者名簿への登録を要件としている場合が見られます。

せっかく、自社にマッチする案件が公示されても、入札参加資格者名簿の登録がなければ参加すらできません。

そのため、自社が参入を検討としている業務分野・発注者の過去の類似案件を調査し、どのような参加要件となっているかを把握し、必要な手続き等を平素から行っておくことが重要です。

まとめ

自治体の人口減少対策は、移住・子育て・産業振興・適応施策と幅広いテーマを含む分野であり、多様な業種・規模の民間企業が参入している市場といえます。一方で、案件の大半は「個別施策の実施」として発注されるため、自社のサービス・専門性と直接接続できる施策カテゴリを特定することが参入の第一歩となります。

プロポーザル方式の案件が多いこの分野では、対象自治体の総合戦略や地域特性を事前に理解した上で提案書を組み立てる力が選定を左右します。地域要件・実績要件への適応も含め、中長期的な視点で実績とネットワークを積み上げるアプローチが有効です。

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