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自治体予算獲得への道|第8回 それってホントにうまくいく?

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自治体予算獲得への道|第8回 それってホントにうまくいく?

2024.10.10

官民連携コラム

目次

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実効性の次は実現可能性

前々回から引き続き、今回も「予算が計上されるために必要な条件」についてお話ししますが、こだわりたいのはやはり「実効性」。

効果が得られるかどうかの検証方法として前回は「風が吹けば桶屋が儲かる」というロジックモデルの話をしました。

▼まだ読んでいない方は、以下よりぜひご覧ください

自治体予算獲得への道|第7回 風が吹けば桶屋が儲かる

目的と手法、効果の因果関係が確かでないとやったことの成果がきちんと得られないという話でしたが、今日は理屈で整理できた「実効性」が実際にうまく機能するのか、という話をしたいと思います。

施設の運営を委託したい、SNSを活用した広報をはじめたい、他の自治体でやったことのないふるさと納税の返礼品を開発したいなど、職員が持っていないアイデアやノウハウ、スキルなど活用したいからこそ、これらを有する民間事業者と組んで、よりよい行政サービスの実現を目指すわけですが、その際には何らかの予算が必要になってきます。

財政課で予算査定をしていた時に必ず聞いていたのは「実際にそれをできる人がいるのか」という点です。

既に経験のある既存事業であれば当然どの業者にどういう発注をすればいいか、役所と民間企業の分担はどうあるべきか、いちいちチェックしなくても大丈夫ですが、初めての取り組み、今までと違うアイデアを実現するものであれば、それがうまくいくかという確認は机上のロジックモデル確認だけでなく、実際にその事業の核心部分を担うことができる事業者がいるのかというところが大きなポイントになります。

プロジェクトを成功に導くもの

新しいアイデアを生み出したり、既存のノウハウやスキルを活用したりすることを期待して民間事業者との協業を検討する際には、自治体職員と民間事業者との間に対話が必要だという話を以前書きました。

やるべきことがすでに決まっていてその仕様書を提示して見積書をもらうのではなく、官民のフラットな対話の中で取り組むべき課題の洗い出し、絞り込みから一緒になって、何ができるか、何が求められるかをゼロベースで考えていく過程で、互いの持っている資源やノウハウを共有し、その活用により実現可能なことを企画していくことになります。

そういった新たなプロジェクトの場合には、財政課でも協業を予定している事業者や業界団体、あるいは関係行政機関、教育機関、市民団体等とどのような役割分担で臨むのか、そのそれぞれのセクターに担当してもらう領域について、知識や経験が備わっていて、当該プロジェクトの担務を遂行することができるか、をヒアリングで確認することになります。

そこでよく話題に上るのが他の事例での実績です。

同種の事業を別の自治体でやったことがある、というのは保守的な自治体組織において未経験の分野に漕ぎ出す際に安心材料としてよく求められる要素です。

しかしながら、私はそこにあまり関心がありませんでした。

むしろ、経験の有無にかかわらず、プロジェクト遂行に必ず必要な「ある要素」を確認することが必須であると私は考えています。

足りないのはWIIFM(What is it for me?)

自治体の仕事の多くは社会課題の解決ですが、困難なテーマを解決する手段として共通するのが「関係者、関係機関との連携」という魔法の言葉です。

どの課題についても自治体の職員だけで解決できるものではなく、民間事業者、行政機関、教育機関、医療機関、地域、市民団体等、テーマごとに協力を得たい関係者、関係機関は多岐にわたるため、その連携組織づくりを問題解決の手法として掲げることがよくあります。

しかしながら、それってホントにうまくいくのでしょうか。

私が以前、プロジェクトマネジメントを学んでいたとき、プロジェクトを成功に導くための要素は6つあり、その中で最も重要なのが“Ownership”(当事者意識)であると学びました。

あるプロジェクトに誰かの参画を求める場合、求める側はその誰かの持っている能力や知見、ネットワークなどの資源を活用したいという思惑、つまり自分のプロジェクトを成功させるためにその誰かの参画が必要だと考えているのですが、求められた側からすれば“What is it for me?”(それは私にとってどういう意味があるのか)という疑問がわきます。

自分の能力、知見、ネットワークなどの資源を活用したいというあなたの気持ちはわかるが、私にとってそれはどういう意味があるのか、ひと肌脱いで自分の持つ資源を投入する私にとってのメリットが何かあるのか、と問いたくなる。

そのことがプロジェクトに誘う側できちんと整理できていない、アピールできていない、プロジェクトに内在させていなければ、参画してくれないのです。

関係者の協力を得るために

ほとんどの行政職員は真面目です。そしてそれぞれが担っている課題解決の使命は社会的に意義があり、ほとんどの場合、その取り組み自体の意義を否定されるようなものではありません。

しかし、取り組みの意義を理解することと、そのために自分の労力や時間、資源を割いて関わることとは別物で、一私人、あるいは民間法人として行政の施策に関わることには、関わる側から見た意義、利益に基づくモチベーションがなければその取り組みへの参画は始まらないし続かないのです。

行政施策でよくある、イベント、教室などへの市民の参加が少ないという課題についても同じことが言えます。

こんなに役に立つ情報を提供しているのに、こんなにいい体験ができるのに、どうして参加してくれないんだろう、情報発信が足りないのかな、という課題認識を持つ方々はたくさんおられます。

これも単に情報発信の量を増やすだけでなく、そもそもの情報発信の手法や表現、あるいはイベントそのものの建付けにおいて、情報を受け取り参加するかどうか考える市民の“What is it for me?”への配慮が欠けていないか、考えてみましょう。

民間事業者の皆さんをはじめ、行政から協力を求められ、協業を持ち掛けられている皆さん、忌憚なく率直に問いかけてみましょう。

“What is it for me?” (それは私にとってどういう意味があるのか) 

対話というインフラが必要

WIIFMを考える上では、相手の立場に立って物事を見る視点が必要です。

自分が他者からどう見えるか、外から眺める第三者の視点を持つことは大変重要ですが、それがいつもできるようになるためにはそれなりの訓練や経験が必要になります。

近年、自治体に求められる役割や機能が変化するなかで、自治体の外側にある組織や人材の力を借り、協力を得ながら物事を進めるという場面も増えました。

民間企業やNPO、地域団体など、頼ることのできるパートナーはたくさんいますが、互いの協力関係を構築するうえで必要な情報共有や意思疎通がうまくいかないということもしばしば見受けられます。

うまくいかない原因の多くは組織文化の壁。

自治体組織が長年育んできた独特の文化が外部ではうまく受け入れられないことや、自治体組織の外側では当然のこととされている常識が自治体職員に通じないということがよくあります。

互いの生きている環境の違い、立脚する法理や社会のルールの違いがそれぞれの組織文化、常識の違いとなってあらわれているわけですが、違う世界に生きる者同士が互いに自分の住んでいない世界のことを知り、その違いの根本を理解しあうために、「対話というインフラ」が必要だと改めて思う次第です。

 

本記事の執筆者
今村 寛(福岡市職員)
財政課長時代に培った知見を軸に出張財政出前講座を全国で展開し約10年間で220回を数える傍ら、市職員有志によるオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰。「対立を対話で乗り越える」を合言葉に、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。著書/ 『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと? 』(ぎょうせい),『「対話」で変える公務員の仕事~ 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』( 公職研)。

 


 

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