自治体

自治体のBPOとは?業務範囲・契約・参入のポイントを解説

「自治体向けのBPO市場に参入したい」と考える民間企業の担当者のなかには、どの業務が委託対象になるのか、どのような資格が必要なのか、どこから手をつければよいのかを把握できていないケースが少なくありません。

本記事では、自治体BPOの基本的な概念から対象業務・委託の仕組み・入札参加資格の取得方法・参入に向けた実践的なステップまでを整理します。自治体向けBPO事業への参入を検討している企業の担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

自治体BPOとは?行政業務における外部委託の概要と特徴

自治体BPOとは、自治体の業務プロセスの一部または全部を外部の専門事業者に委託する取り組みを指します。近年、職員不足や業務効率化の必要性から、多くの自治体でBPOの活用が加速しています。

民間企業と同様に自治体でも、BPOを活用して業務の効率化を図ろうとする動きがあります。

自治体のBPO案件を受注していく前提として、対象業務や民間BPOとの違いを知っておくことが重要です。

ここでは、以下の2つについて解説します。

  • BPOの概要と自治体業務への適用イメージ
  • 民間BPOと自治体BPOの違い

BPOの概要と自治体業務への適用イメージ

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、企業や組織が自社内で行っている業務プロセスを、外部の専門事業者に包括的に委託することです。民間企業では、人事・経理・コールセンターといった間接業務から、特定の専門業務に至るまで、幅広い領域で活用されています。

自治体においては、窓口業務・コールセンター運営・データ入力・書類処理といった定型的な業務を中心に、BPOの活用が行われています。住民からの問い合わせ対応や給付金の申請受付処理など、一定規模の人員を要する業務が委託対象になりやすい傾向があります。

ただし、自治体の業務のうち、「公権力の行使」に当たる業務(許認可など)は職員が直接担う必要があり、民間への委託は法律上認められていません。

民間に委託できる範囲は、公権力の行使を伴わない定型的・補助的な業務に限られます。この範囲を正確に理解することが、BPO事業者として自治体に提案するうえでの出発点となります。

民間BPOと自治体BPOの違い

民間企業向けBPOと自治体向けBPOは、根底にある委託の目的と、発注の仕組みが異なります。

民間企業の活動は、市場競争に勝ち抜き、利益を最大化することが最終ゴールです。そのため、民間企業におけるBPO活用は、スケールメリットを持つ専門業者に委託することによるコスト削減や専門性の確保、付加価値が高い「コア業務」への集中などが活用の動機とされます。

一方、自治体は公共サービス提供の継続が目的です。自治体BPOの活用は公共サービス提供に際するリソース不足への対応が主な動機です。

窓口業務・定型業務等でBPOを活用する例や、住民サービスのデジタル化や短期的に業務が発生する臨時の給付金業務などで、短期間かつ膨大な業務が発生した際、機動的に対応するために活用する例が見られます。

また、発注のプロセスも大きく異なります。

民間BPOは双方の合意のみで契約できますが、自治体BPOは原則として入札または公募の手続きを経る必要があります。

仕様書に定められた要件を満たしたうえで公表される競争に参加し、価格や提案内容の優劣によって受注が決まります。

受注者の決定が、公表案件への参加によって決定される点は、自治体のBPO案件受注の前提として理解しておく必要があります。

自治体BPO市場の状況と活用の背景

自治体向けのBPO市場に参入を検討するにあたっては、市場の状況とBPO活用の背景を把握し、参入機会をより的確に捉えることが重要です。

ここでは、以下の3つについて解説します。

  • 自治体BPOの市場規模
  • 自治体BPOの需要が高まる背景
  • 業務デジタル化の進展に伴う委託範囲の拡大

自治体BPOの市場規模

株式会社矢野経済研究所の調査によれば、自治体BPO市場は、国内において数兆円規模の大きな市場を形成しています。近年の調査では、おおむね5兆円前後の規模とされており、民間を含むBPO市場全体の中でも一定の存在感を占めています。(出典:矢野経済研究所「自治体向けBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年)」プレスリリース)

また、市場は急成長というよりも安定的に拡大している点が特徴です。今後も大幅な伸びというよりは、既存業務の外部委託の進展やデジタル化の進行に伴い、緩やかな成長が続くと見込まれています。

自治体BPOの需要が高まる背景

総務省「令和7年地方公共団体定員管理調査結果の概要(令和7年4月1日現在)」によると、自治体の職員数は平成6年をピークに減少し、平成29年以降は微増から横ばいの傾向が続いています。自治体は、以前と比較してより少ない人員で業務をこなす必要性に迫られています。

昨今では、民間企業との人材獲得競争や若手職員の離職、地方では若年層の都市部流出が続いており、採用による体制補強が難しい状況があります。

業務デジタル化の進展に伴う委託範囲の拡大

マイナンバー制度の普及やオンライン申請の拡大、行政DX推進が進むなかで、自治体業務のデジタル化は加速しています。それに伴い、データ処理・システム運用・デジタル窓口のサポートといった業務も新たにBPOの対象として浮上しています。

デジタル行政書類の読み取り・入力作業や、オンライン申請の不備確認処理、コールセンターによるデジタル操作サポートなど、紙からデジタルへの移行に伴い新たな業務需要が生まれています。

こうした行政の取組みは、BPO事業者にとって参入機会の広がりを意味します。

委託対象となりやすい業務の種類

自治体でBPO委託の対象になりやすい業務の特徴として、「定型業務」「膨大な業務量への対応」が挙げられます。

具体的には、次のようなものがあります。

  • 窓口業務(転入・転出手続きの補助、申請書類の受付・確認)
  • コールセンター業務(住民からの問い合わせ対応、24時間受付・多言語対応等)
  • データ入力・書類処理(申請書類のデータ化、電子化作業)
  • 給付金・補助金の申請処理補助(様式確認、不備対応)
  • DX関連業務(申請システムの操作サポート、ヘルプデスク)

これらは、いわゆる「公権力の行使」を伴わず、マニュアル化や人員ローテーションが比較的しやすい業務です。

そのため、自治体としても業務委託を検討しやすく、BPO事業者が参入しやすい領域となっています。

自治体BPOにおける発注方式

自治体のBPO案件における主な発注方式は、一般競争入札・指名競争入札・随意契約・公募型プロポーザルの4種類です。

一般競争入札

一般競争入札は、参加資格を満たすすべての業者が参加できます。業務内容が仕様書で詳細に定義されている場合に使われることが多い方式です。

一般競争入札ではに、落札者は原則として最も低い価格で入札した事業者となります(最低価格落札方式)。一方で、いわゆる「安かろう悪かろう」への対策として、価格以外の要素を加味して落札者を決定する方式が採用されることもあります(総合評価落札方式)。

指名競争入札

指名競争入札は、業務の予定価格の規模や業務の難易度等に応じて、自治体が複数の事業者を指名し、指名事業者のみで競争入札を行う方式です。

指名競争入札でも、落札者の決定は最低価格落札方式または総合評価落札方式によって行われます。

随意契約

随意契約は、特定の事業者と直接契約を結ぶ方式です。業務に特殊性がある場合や、緊急性がある場合など、地方自治法等で定める要件に該当する場合のみ行うことが可能です。

公募型プロポーザル

公募型プロポーザルは、高度かつ複雑な業務等の場合に、事業者の提案を加味して業務を決定していく場合に採用されます。コールセンター運営やデータ処理の高度化など、単純な価格比較では評価できない案件に使われます。

民間企業が自治体BPOに参入する際の課題

自治体BPOへの参入は、民間向けBPOとは異なるハードルを伴います。参入前にこれらの課題を整理することで、準備を効率的に進めることができます。

ここでは、以下の3つについて解説します。

  • 参加資格・認証取得の壁
  • 仕様書対応・セキュリティ要件の複雑さ
  • 価格競争と差別化の難しさ

参加資格・認証取得の壁

自治体のBPO案件に参加するためには、自治体ごとの入札参加資格者名簿への登録が必要です。都道府県・市区町村それぞれが独自に資格審査を実施しており、複数の自治体を対象にする場合は各自治体に個別の申請が必要です。

加えて、自治体BPO案件の参加要件には、情報セキュリティに関する要件が設定される場合が見られます。中でも頻繁に求められるのが、プライバシーマーク(Pマーク)またはISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得です。

自治体業務では、住民の個人情報が含まれる場合が多くあります。そのため、受託事業者に対してセキュリティ管理体制の証明を求めることが通例となっています。

PマークやISMSなどのセキュリティ認証は、取得審査から認証取得まで半年〜1年程度かかることが多く、参入準備のハードルとなっています。「案件を見つけてから動く」では間に合わないため、事前の資格取得計画が必要です。

仕様書・入札説明書等の読み解きさ

自治体が発注するBPO案件の仕様書や入札説明書等は、行政独自の記述が含まれる場合も多く、新規参入される事業者にとってはこれらの読み解きだけで一定の工数が必要になることもあります。

また、セキュリティ要件については、自治体固有の情報セキュリティポリシーへの準拠、庁内ネットワークとの接続制限、クラウドサービス利用に関する規制など、自治体ごとの条件が付く場合があります。こうした要件への対応経験がなければ、入札の準備に相当な時間がかかることがあります。

価格競争と差別化の難しさ

自治体BPO案件の競争入札では、原則として最も低い価格で入札した事業者が落札することになり、価格競争が激しくなる場合もあります。特に、新規参入事業者は、既存事業者の官公庁業務ノウハウを背景とした価格競争に巻き込まれることが想定されます。

一方で、プロポーザル方式の案件では提案力・運営実績・人員体制が評価されるため、価格以外での差別化が可能です。自治体BPOへの参入初期は、プロポーザル方式の案件にも積極的に参加し、ひとつずつ官公庁業務の実績を積み上げることが、有効な戦略の一つです。

自治体BPO参入に向けた実践的なステップ

自治体BPOへの参入を具体的に進めるには、準備すべき事項を段階的に整理することが重要です。

ここでは、ターゲット設定から受注獲得までを、以下の4つに整理して解説します。

  • ターゲット自治体と対象業務の絞り込み
  • 入札参加資格の取得
  • 体制整備と認証取得の順序
  • 入札対応・実績の獲得

ターゲット自治体と対象業務の絞り込み

まず行うべきは、ターゲットとする自治体の規模・地域を絞り込むことです。

大規模都市の自治体はBPO案件の金額規模が大きい反面、官公庁業務の実績要件等の参入ハードルも高く、競合事業者も多くなるなど、難易度が高いことが想定されます。

まずは、自社の営業エリアの中~小規模の自治体を中心に、官公庁業務の実績要件が求められない案件への入札参加から始めることがおすすめです。

対象業務の絞り込みも重要です。自社のオペレーション体制・人員スキル・セキュリティ管理水準に合致した業務から参入を開始することで、受注後の業務遂行上のリスクを抑えられます。

入札参加資格の取得と体制整備

ターゲット自治体を決めたら、その自治体の入札参加資格申請の時期と手順を確認します。

多くの自治体では、資格申請を通年で受け付けています。資格審査には最低でも数週間を要する場合が多いので、早めに手続きを行うことが重要です。

また、自治体によっては、複数自治体の入札参加資格申請を一括して行える場合もあります。参加資格申請時点ではターゲットと考えていない自治体であっても、自社に合う入札案件が出ることもありますので、幅広に資格取得しておくことがおすすめです。

併せて、参加する自治体BPO業務で求められる各種認証取得も並行して進めることが必要です。参入を目指す時期から逆算したスケジュール管理が求められます。

入札対応・実績の獲得

入札参加資格を取得したら、自治体のホームページ・電子入札システム、あるいは民間の入札情報提供サービスを活用して、ターゲット自治体の発注案件を継続的に把握します。

案件ごとに仕様書を精読し、自社の体制で対応可能かどうかを見極めたうえで入札に参加します。

自治体のBPO案件では官公庁業務の実績が要件になっている場合も多いため、最初の受注では利益率を大きくすることよりも、実績の獲得を優先することも検討するとよいでしょう。自治体BPOは同種業務の実績が求められる場合や、同種業務が継続して発注される場合も多いため、次回以降の入札でさらに競争優位性を高めることにつながります。

まとめ

自治体BPOは、職員不足・業務デジタル化・行政効率化といった構造的な課題を背景に、今後も市場が拡大すると見られます。民間企業にとっては、継続性の高い安定的な受注機会が見込める分野です。

参入に際しては、入札参加資格の登録や各種認証の取得・ターゲット自治体が出発点となります。特に認証取得は時間がかかるため、参入計画の早い段階から準備を進めることが求められます。

また、自治体BPOは価格競争一辺倒の入札だけでなく、提案力を活かせるプロポーザル型の案件も多く存在します。自社の強みを整理したうえで参入戦略を設計することで、競争優位を築きやすくなります。

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個別相談も受け付けておりますので、自治体向け事業の検討にあたってお困りの点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

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