自治体営業

自治体コールセンター運営を受託するには?要件と参入のポイント

しかし、「自治体のコールセンターの運営を受託したい」と考える事業者にとって、どのような要件が求められるのか、どのような流れで受注が決まるのかを体系的に把握することは容易ではありません。発注方式・必要な認証・仕様書の要求事項は案件ごとに異なり、参入を検討する段階での情報収集が難しい分野でもあります。

本記事では、自治体コールセンターの設置目的・業務範囲・委託要件から、受注に向けた実践的なポイントまでを解説します。

自治体のコールセンター業務とは?設置の目的と概要

自治体のコールセンターは、住民からの各種問い合わせに一元的に対応するために自治体が設置・運営する電話窓口です。職員の業務負担軽減や住民サービスの均質化を目的として、自治体でも電話相談窓口業務を外部委託することが進んでいます。

受託を検討する前提として、その役割と民間コールセンターとの違いを理解しておく必要があります。

民間コールセンターとの違い

民間企業向けコールセンターとの根本的な違いは、目的と法的責任の所在にあります。

民間のコールセンターは顧客満足度向上などを通じたビジネスの拡大を目的としますが、自治体コールセンターは公的サービスの提供・継続が目的です。

電話対応を通じて問い合わせをした方の疑問を解決する点は同様ですが、設置の背景が異なります。

また、自治体のコールセンター業務の発注先は、原則として入札による必要があります。

民間コールセンターとは異なる調達・契約の仕組みを理解することが、参入の前提となります。

自治体コールセンターの役割と設置目的

自治体のコールセンターは、住民から各種手続きに関する問い合わせを受け付け、適切な情報を提供するための窓口です。庁内の各課所で職員が個別対応する状況を、センターに対応を一元化します。

設置目的は主に次の2点です。

住民サービスの均質化

1つは、住民サービスの均質化です。担当者によって回答が異なるという状況を避けるため、コールセンターが統一されたマニュアルに基づいて回答します。

職員の本来業務への集中

2つ目は、職員の本来業務への集中です。問い合わせ対応に追われていた職員が、より専門性の高い業務に注力できる環境を整えます。

また、業務の担当課所の人員では到底対応しきれない件数の問合せが想定される場合も、コールセンターの設置が検討されます。

自治体コールセンターの具体例

近年設置・運営されている自治体のコールセンターを、その役割などを基に分類すると、次のようなパターンがあります。

  • 総合案内型
  • 制度・給付金専用型
  • 多言語対応型

総合案内型

住民からのあらゆる問い合わせを一次受付し、担当課へ転送または直接回答します。

一般的には「電話交換業務」として発注され、広義のコールセンター業務と言えます。

制度・給付金専用型

特定の制度や給付金に関する問い合わせに特化したコールセンターです。

例えば、納税に関するコールセンターなど、経常的な制度・手続きについては定期的に発注がなされます。

一方で、臨時の給付金制度などに対するコールセンターの場合、制度の手続き期限を目途に期間を限定して発注されます。

多言語対応型

外国語を使う住民や旅行者などを対象として、医療・旅行情報等を提供するために複数言語で対応するコールセンターです。

自治体コールセンターの種類と対応業務の範囲

自治体コールセンターが担う業務の範囲は、一般的な問い合わせ対応から専門性や特殊要件を伴う業務まで多岐にわたります。委託受託にあたっては、業務範囲の全体像を正確に把握することが重要です。

ここでは、以下の2つについて解説します。

  • 自治体のコールセンターで行う業務
  • 自治体コールセンターならではの特殊要件(24時間・多言語)

自治体コールセンターの業務の類型

自治体コールセンターで委託対象となる業務は、機能別に整理すると、主に以下のように分類できます。

  • 問い合わせ対応(一般案内):制度概要や手続きに関する基本的な質問への回答
  • 手続き支援:転入届や各種申請の方法、必要書類の案内、オンライン申請の操作補助
  • 受付業務:窓口予約や各種申込の受付対応
  • 相談・連携対応:福祉・子育て・介護など相談性の高い案件の一次受付および担当部署への接続
  • 苦情・要望対応:住民からの意見・苦情の受付および所管部署への引き継ぎ
  • 発信業務(アウトバウンド):申請不備の連絡、未納案内、事業参加の勧奨などの架電対応

このうち、問い合わせ対応や手続き支援は比較的マニュアル化しやすく、標準的なコールセンター運用で対応可能です。一方で、相談・連携対応や苦情対応は、個別事情に応じた判断や適切なエスカレーションが求められるため、オペレーターの経験や体制設計が重要となります。

また、発信業務を含む場合は、業務設計やKPI管理(架電件数・到達率など)の観点も必要となります。

特殊要件(24時間・多言語)

仕様書において、24時間365日対応や多言語対応が求められる場合、通常のコールセンター業務に比べて体制要件が大きく変わります。

24時間対応では、夜間・休日を含めたシフト体制の構築が必要となり、人員確保や運用コストが増加します。また、時間帯によってはAIチャットボットや自動音声応答(IVR)との併用が前提となるケースもあるため、どこまで有人対応が求められるかを仕様書で確認する必要があります。

多言語対応では、対応言語ごとのオペレーター配置、もしくは外部通訳サービスの活用が必要となります。対応言語数や対応時間帯によって難易度とコストは大きく変動します。

これらの特殊要件は、単に業務内容の拡張にとどまらず、運用体制やコスト構造に直接影響するため、入札参加の可否や見積精度において重要な判断要素となります。

自治体コールセンター案件の発注規模・委託期間・更新サイクル

案件参入の検討にあたっては、発注規模の目安と委託期間の傾向を事前に把握しておくことが重要です。コールセンター案件は継続性の高いものも多く、契約のサイクルを理解することが参入戦略の基礎となります。

ここでは、以下の2点について解説します。

  • 発注規模の目安と契約形態
  • 委託期間の傾向と更新サイクル

発注規模の目安と契約形態

自治体コールセンターの案件規模は、自治体の人口規模・回線本数・対応時間帯・対応業務によって大きく異なります。

例えば、マイナンバーカード交付に関するコールセンター業務の場合、政令指定都市が発注するものでは数千万円から1億円程度の落札金額となっている事例が見られます。

一方で、期間限定のコールセンター業務の場合は数百万円程度の落札価格となっている事例もあります。

回線本数・月間受電件数・稼働時間帯に応じて委託金額が変動するため、仕様書に記載された業務量の見込み数値を精査したうえで見積もりを組む必要があります。

契約形態は単年度契約の場合もあれば、経常的なコールセンター業務の場合は長期継続契約となる場合もあります。

委託期間の傾向と更新サイクル

自治体コールセンターは継続性のある案件も多くあります。その場合、一般的には4月から3月までの1年間を委託期間とし、委託期間満了時あるいは満了前に再度入札や公募が行われることが一般的です。単年度契約が繰り返される案件もあれば、複数年度の長期継続契約で運営される案件が混在しています。

短期的な問い合わせ需要に対応する場合は、コールセンターを設置する期間の数か月前に、随時入札や公募が行われます。

自治体コールセンターの業務委託の流れと入札参加要件

自治体のコールセンター案件は、民間との取引とは異なる調達プロセスを経て発注されます。参入の前提として、発注方式と入札参加に必要な要件を正確に理解しておく必要があります。

ここでは、以下の3つについて解説します。

  • 発注方式(プロポーザル・競争入札)
  • 必要な資格・セキュリティ認証
  • 仕様書に記載される典型的な要求事項

発注方式(プロポーザル・競争入札)

自治体コールセンターの発注方式は、公募型プロポーザルと一般競争入札の2つが主流です。

公募型プロポーザルでは、提案書・見積書を審査したうえで優先交渉権者を選定し、随意契約を締結します。

評価項目は案件ごとに異なりますが、一般的には業務執行体制、同種業務での実績、人員体制、業務実施方法、セキュリティ対策などが評価項目となります。

一般競争入札では、原則として最低価格を提示した参加者が落札します。比較的単純な問い合わせ対応業務で使われることが多く、仕様書に定められた要件を満たしていれば、価格が決め手になります。

必要な資格・セキュリティ認証

自治体コールセンターの案件では、情報セキュリティ関連の認証取得が参加要件として設定されることが一般的です。

最も多いのはプライバシーマークまたはISMSの取得要件です。住民の個人情報を扱うため、情報管理体制の証明として求められます。加えて、情報セキュリティに関する教育・訓練の実施体制や、インシデント対応フローの整備を要求する仕様書も増えています。

入札参加資格の登録については、役務(一般委託)の区分での登録が必要になる場合が多く、ターゲット自治体の資格申請区分を事前に確認しておくことが求められます。

仕様書に記載される典型的な要求事項

実際の仕様書には、以下のような要求事項が記載されることが多くあります。

  • 稼働時間・回線数
  • オペレーターの研修内容・資格要件
  • コールセンターシステム(CTI等)の要件
  • 業務報告書の様式・提出頻度
  • 業務開始・終了時の引き継ぎ体制
  • 有事(大規模災害・感染症拡大等)における業務継続計画(BCP)

仕様書の内容は案件ごとに異なりますが、公募型プロポーザル方式等で価格以外の要素が評価される場合は、上記要件への対応内容が評価を左右します。

参入前に類似案件の仕様書を収集・分析し、自社に有利な業務内容をリサーチすることが有効です。

民間企業が受託するためのポイント

自治体コールセンター案件の受託には、案件ごとの要件と自社の体制を照らし合わせた戦略的なアプローチが求められます。

ここでは、参入初期から受注確率の向上までの実践的な3つのポイントとして、以下の3つを解説します。

  • ターゲット自治体の選定(地域要件を加味)
  • 実績不問の案件からの参入
  • 公募型プロポーザルでの勝率向上

ターゲット自治体の選定

コールセンター案件の仕様書には、「事業所が当該都道府県内にあること」「委託開始後○ヶ月以内にセンターを開設できること」といった地域・設備要件が付くことがあります。

受託できる自治体の範囲は、自社のオペレーション体制によって制約される点に注意が必要です。

参入初期は、地域要件を満たせる範囲で自治体を絞り込み、その中から発注規模・業務内容・競合状況を分析してターゲットを選定することが有効です。

実績不問の案件からの参入

コールセンター案件のなかには、参入実績が問われない案件も存在します。特定の給付金・マイナンバー関連の問い合わせ対応など、短期・単発のコールセンター業務はその典型です。

規模は小さくても、こうした案件で受注実績を積み上げることが、その後の大規模案件への参入に向けた信頼構築につながります。また、短期案件での受注では、自社のオペレーション体制・品質管理の水準を実証する機会にもなります。

公募型プロポーザルでの勝率向上

プロポーザル案件では、提案書の質が落札の鍵を握ります。

プロポーザル実施要領等に記載された業務目的・評価項目に対して、具体的な運営体制・実施方法を提示することが求められます。

また、競合他社との差別化要素を明確に提案に盛り込むことも必要になります。評価項目ごとに配点を把握し、高配点の項目に重点を置いた提案構成を設計することが勝率向上につながります。

まとめ

自治体コールセンターの受託には、入札参加資格の登録・セキュリティ認証の取得・発注方式に応じた対応体制の整備が必要です。一方で、案件の種類・規模は多様であり、単純な問い合わせ対応から相談支援型まで、参入できる業務領域は広く存在します。

参入初期は、競合の少ない小規模案件や実績要件のない短期案件からスタートし、徐々に実績と信頼を積み上げていく戦略が有効です。プロポーザル型の案件では、提案内容の質が結果を左右するため、自治体のニーズに応じた提案力の強化が求められます。

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