地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスとは何か?

目次
はじめに
地域活性化ビジネス・地方創生ビジネスには、地方に住む方々だけでなく、日本全体から期待が寄せられているビジネスです。
地域活性化と地方創生は似ているけれど、どう違うのでしょう?
国や地方公共団体の民間企業への支援はどんな方針で行われるのでしょう?
ここでは、地域活性化と地方創生の言葉の説明だけでなく、「日本の地方」が抱えている諸問題と、地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスにに対する国や地方自治体の動きを説明します。
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスとは
地方活性化と地方創生はほぼ同じ意味ですが、使われ始めた時期が違います。ただし明確な区切りはありません。
地方活性化 | 「地域おこし」です。1960年代以降の大都市圏・地方都市圏への人口移動と地方過疎化の対策として行われました。
「地域再生」「地方振興」という言葉も使われます。 |
地方創生 | 東京一極集中を解消し人口減や雇用減に苦しむ地方自治体の活性化を目ざす政策です。
第二次安倍晋三政権の目玉政策のひとつです。 |
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスへの障壁を無くすために特区制度ができています。
総合特区 | 「国際戦略特区」と「地域活性化総合特区」があります。
経済社会の構造改革を重点的に推進する地域のことです。 |
国家戦略特区 | 産業の国際競争力の強化を目的とした特区です。 |
地域活性化総合特区 | 農業、観光業その他の産業の振興を目的とした特区です。 |
その他に、地域活性化・地方創生のために作られた法律があります。
ここにある法律は一例です。
法律を実行するための政令などもあり、定期的に改正されていますのでご確認ください。
地方再生法 | 地方の自主自立を守りながら、地域経済を活性化し、雇用を創出するための法律です。 |
都市再生特別措置法 | 都市機能の高度化及び都市の居住環境の向上、防災機能の確保のための法律です。 |
まち・ひと・しごと創生法 | 人々が安心して生活を営み、子 供を産み育てられる社会環境を作ることで地域を活性化させる法律です。 |
中心市街地の活性化に関する法 | 地域の自主性及び自立性を尊重しつつ、中心市街地の活性化に関する政策を国が作るための法律です。 |
日本の地方の課題は、世界共通の課題
地域活性化ビジネス・地方創生ビジネスを展開する上で、どうしても向き合わざるをえない課題があります。
課題は、「その土地独自の課題」と、「日本の地方共通の課題」に分けられます。
後者の、日本の地方が抱えている共通の課題は、一見すると日本だけの課題のように見えます。
しかし、実は国や地域を超えた世界共通の課題でもあります。
ここではその課題の中から一部を取り上げます。
気候変動による災害
ドイツのシンクタンクGermanWatchのレポート”Global Climate Risk Index 2020“で、気候変動・地球温暖化の影響を最も受けた国として日本がランキング1位になりました。
近年危険性を増している台風や広範囲の豪雨が水害を引き起こし、日本各地でインフラが破壊されています。
しかし、地方の人不足や財政難などにより破壊されたインフラの復旧ができにくい状態です。
今後も水害を引き起こす豪雨が降る可能性が高く、日本各地で災害対策が必要になっています。
気候変動による天然資源への影響
天然資源とは、人間の生活や生産活動に利用することのできる物やエネルギーのことです。地方の人々が生活するためにも、産業のためにも重要なものです。
しかし気候変動により、この天然資源にも影響が及んでいます。
例えば、
などです。
気候変動が日本各地の産業に影響を与えています。
過疎・高齢化・女性人口の減少
過疎と地方の高齢化は、高度経済成長期からの日本の問題でした。近年は女性人口の減少も問題視されています。
女性は、農業・医療・福祉・食品製造・サービス業などあらゆる業種で、無償もしくは廉価で仕事を引き受けてきました。
その女性たち自体が日本各地で減少し続けています。
特に若い世代は東京都市部を含めても女性人口が男性に比べて減っています。
中国・インドその他のアジア諸国も同様に、大規模な女性不足が生じています。
外国から女性を連れてくれば良いという非人道的な政策は極めて困難な状態です。
(参考:マーラ・ヴィステンドール『女性のいない世界』講談社 )
この女性人口の減少の主な原因は、ジェンダーに基づいた差別や暴力です。
無償もしくは廉価で仕事を引き受けている女性たちは、ジェンダーに基づいた暴力を日々受けています。勉強も労働も邪魔されています。
人数が減っても、迷信や差別によりさらに暴力をふるわれ、さらに人数が減っていくという深刻な問題があります。
人身取引問題
人身取引とは、搾取を目的とし、暴力や詐欺等の手段を使って、対象者を獲得・輸送・引渡し・蔵匿・収受などの行為をすることです。
(被害者が18歳未満の児童の場合は、「手段」に関係なく人身取引に該当します。)
世界規模で人身取引問題が多発しており、非常に問題視されています。
厚生労働省 外国人技能実習制度の課題と取り組み
それでは、このような世界規模の課題に対して、どのような対策が進んでいるのでしょうか?
世界規模の取り組み・持続可能な開発目標(SDGs)
現在、日本の地方で起きている課題は、世界共通の課題であり、世界規模の取り組みが進んでいます。
その取り組みの大きな柱が「持続可能な開発目標(SDGs)」です。
国・地方公共団体・国際機関は、この「持続可能な開発目標(SDGs)」を基準に動いていますので、知っておくと自治体交渉や自治体担当者とのコミュニケーションに大変有利です。
持続可能な開発目標(SDGs)のポイントは
✔︎ 2016年から2030年までの国際目標 ✔︎ 持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲット ✔︎ すべての国や自治体、企業に対して適応される目標 です。 |
日本政府が推進する『SDGsアクションプラン2019』には、
「SDGsを原動力とした地方創生」、気候変動対策を盛り込んだ「強靱かつ環境に優しい循環型社会の構築」、女性活躍のための「次世代・女性のエンパワーメント」というテーマがあります。
SDGsを原動力とした地方創生を実行するために「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」ができています。
今後、地域活性化ビジネス・地方創生ビジネスを展開する上では、この「持続可能な開発目標(SDGs)」に基づいた説明ができるかどうか?が鍵になりそうです。
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネス支援の探し方
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスに対する支援を探す場合、国や地方公共団体・地方金融機関・クラウドファンディング等が一般的です。
しかし、ひとつの地域を対象にしたビジネスであっても、世界規模の課題と認識された問題を解決するビジネスには、国際組織や海外金融機関から支援があるかもしれません。
是非、幅広く支援先を探してみてください。
国・地方公共団体
地域活性化や地域創生を実現するために、政府や国の省庁・地方自治体が様々な支援を行なっています。
年度によっても変わる場合がありますので、必ず最新の情報をご確認ください。
内閣官邸の支援プランの例
地域再生制度 | 「就業の機会の創出」「経済基盤の強化」「生 活環境の整備」を実現するための制度です。
許可などの手続き特例があったり、資金調達の特例などがあります。 |
市街地活性化制度 | 中心市街地における都市機能の増進や経済活性化を実現するための制度です。市町村・商工会議所・民間企業・地域住民を含めた街ぐるみで取り組みます。 |
地方創生推進交付金 | 自治体の自主的・独立的な地方創生の取り組みに対する交付金です。交付金は国から自治体に支払われますが、自治体経由で様々な支援事業が行われます。 |
国の各省庁それぞれに、地域活性化・地方創生支援案内が出ていることがありますので、官公庁の最新の情報の確認をお勧めします。
国の省庁による支援プランの例
ICT地域活性化プラットフォーム | 総務省の地域活性化支援サイトです。ICT地域活性化大賞などの情報があります。 |
観光地域づくり | 国土交通省観光庁の地域活性化支援サイトです。 |
その他、各都道府県・市区町村で地域活性化・地域創生ビジネス支援政策ができることがありますので、最新の情報の確認をお勧めします。
国際機関・基金
国や地域を超えて世界で連携して取り組む、気候変動対策事業や持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための事業などは、国際機関や国際的な基金団体などの支援もあるかもしれません。
例えば、緑の気候基金などです。
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネスの成功例
・クラウドファンディングによる古民家を活した宿 泊施設の整備 (明日香村古民家活用おもてなしファンド)
地域経済循環創造事業交付金(総務省)を利用しています。
クラウドファンディングによって、1,500万円を資金調達しています。
地方創生先行型交付金(内閣府) 地方創生加速化交付金(内閣府) 地方創生推進交付金(内閣府)を利用しています。
バイオマス資源の利用と観光事業を連携させた事業です。
・(株)サンライズ西条加工センター/(株)サンライ ズファーム西条
総合特別区域制度(内閣府)、 6次産業化活動交付金(農林水産省)、地域新成長産業創出促進事業(経済産業省)、 ものづくり・商業・サービス革新事業(経済産業省)制度を利用しています。
農産物の大規模加工施設の整備事業です。
地方活性化ビジネス・地方創生ビジネス:まとめ
いかがでしたでしょうか?
地域活性化ビジネス・地域創生ビジネスは、その地域の人々だけでなく、日本全体が期待しているビジネスです。
高度経済成長期から始まった「街おこし」と比較すると、現代の「地域活性化」「地域創生」はグローバル化し、気候変動など世界規模の取り組みも含まれるようになりました。
地域の問題をビジネスを通じて解決することで、世界規模の問題解決にもつながる可能性を秘めています。
そのため、国や地方公共団体、地方金融機関、クラウドファンディングだけでなく、国際機関、国際基金などの支援の可能性もあります。