公示・公告・告示とは?入札等情報の集め方についても徹底解説!
入札では、「公示」「公告」「告示」という言葉をよく見かけます。
なんとなく意味はわかるけれど、実はよくわかっていないという方がほとんどではないでしょうか。
- 3つの言葉の共通点は?
- 3つの言葉の違いは?
- 入札においてどのような違いがあるのか?
- どのような時に「公示」「公告」「告示」という言葉を使うのか?
ここでは、「公示」「公告」「告示」の違いを説明し、入札情報の集め方も説明します。
目次
公示・公告・告示の違いは?

公示・公告・告示は何が違い、何が共通しているのでしょうか。
具体的な例も挙げながら説明します。
公示・公告・告示の違いは主体性の違い
公示・公告・告示は、どれも何らかの事項を広く伝える点は共通していますが、情報を発している主体が主に異なります。
| 主体性(誰が情報を発しているか) | 民間は含まれるか | 使用例 | |
| 公示 | 公共機関 インフラなどの公的性質を持つ民間機関 |
一部含まれる | ・衆院選の投票日が公示される ・公示地価が前年より上昇した |
| 公告 | 民間や公共機関 | 含まれる | ・名古屋市は一般競争入札の開始を公告した ・企業の決算公告を調べる |
| 告示 | 国や地方公共団体 | 含まれない | ・条例に基づき、不法投棄物を撤去したため告示する ・東京都知事選挙を告示する |
公示、公告、告示の中で、主体範囲が最も狭いのは「告示」です。
「告示」は国や地方公共団体などの行政機関が広く情報を伝える際にのみ使われる言葉であり、民間企業から何かを伝える際に使うことはできません。
「公示」は国や地方自治体といった行政機関に加えて、交通機関やインフラ設備、医療機関といった公的性質をもつ民間機関も主体に含まれます。
交通機関やインフラ設備などの機関は民営化しているところも多いですが、公の機関と見なせる施設が何か情報を発する場合は「公示」が使われます。
「公告」は主体が公共機関に限りません。
「公告」の場合は公共機関に加えて、株式会社などの民間企業も主体になりえます。
| 主体の範囲:告示<公示<公告 |
ただ、民間企業は「法令に従った内容」を通知する場合にのみ、公告という言葉が使われます。
多くの場合は「決算公告」の言葉で使われ、株式会社による自社情報の公開は法令で義務付けられているため、「公告」が使われるのです。
選挙用語としての「公示」「告示」の違い
また、選挙では「公示」と「公告」の言葉が使い分けられます。
| 選挙における使用方法 | |
| 公示 | 衆議院の総選挙と参議院の通常選挙において使われる |
| 告示 | それ以外のすべての選挙 |
公示は「衆議院の総選挙」と「参議院の通常選挙」でのみ使われる用語です。
それ以外の選挙ではすべて「告示」が使われます。
ややこしいように感じますが、選挙における公示と告示の使い分けは公職選挙法によって定められているルールのため、間違えて使わないように注意しましょう。
公示・公告・告示の共通点は?
公示・公告・告示はいずれも「情報を一般へ広く知らせること」という点が共通しています。
また、いずれの用語も、公的機関が発表する場合か、民間機関が公的な性質を持つ内容を発表する場合に使います。
また、通知の方法も共通点の一つ。
多くの場合、官公庁の入り口に通知文を掲示したり、公式ホームページや紙の官報や広報、新聞等で知らせたりします。
場合によってはテレビで知らせたり、宣伝カーで知らせたりすることもあります。
公示・公告・告示を行う理由
なぜ官公庁などは公示・公告・告示を行うのでしょうか?
理由は以下の通り。
- 多くの人に知らせる必要があるため
- 個々に連絡をとるのが予算的に難しいため
- 相手の居場所を把握するのが難しいため
国民や地域住民は、誰もが生まれながらにして平等であり、官公庁が決めたことについても、平等に情報を知る権利を持っています。
とはいえ、官公庁から見ると「知らせるべき相手が多すぎる」のです。
東京都を例にとると、東京都の人口は約1400万人。
全ての都民に文書などで通知しようとすると、膨大な業務量となり財政を圧迫してしまいます。
また、現代の日本では誰もが自由に引っ越しできるため、個別通知にすると情報を得られない国民が一定数存在する可能性が高くなってしまいます。
情報を得る権利に不平等が生じてしまうのです。
そのため、国民や住民にできるかぎり不利益にならないように「公示・公告・告示」という方法をとるようになりました。
公示・公告・告示の特徴と具体的使用例

公示・公告・告示の特徴と具体的な使用例を見ていきましょう。
公示の特徴
公示の特徴は以下の通り。
| 誰が公示をするのか? | 国や地方公共団体
郵便局、大学、学校、医療機関、電力会社など、公共の役割のある民間機関 |
| 誰に対して公示するのか? | 広く一般の人々 |
| 法令上の根拠は? | 法令上で決められた公示もあるが、特に決められていない公示もある |
| 公示をすることで、何が起こるのか? | 場合によっては、一定の法律的な効果が現れることがある
※法律的効果が現れる場合はあらかじめ法令で決められている |
公示の具体的使用例
(1)衆議院議員の総選挙や参議院議員の通常選挙
天皇による「総選挙の期日の発表」は「公示」と言われます。
【例文】
- 衆院選の公示が迫り、各政党は準備に追われている
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。二 国会を召集すること。三 衆議院を解散すること。四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。七 栄典を授与すること。八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。九 外国の大使及び公使を接受すること。十 儀式を行ふこと。
【引用元】日本国憲法(昭和二十一年憲法)
(2)地価の発表
毎年一回、国土交通省の土地鑑定委員会が地価を「公示」の形で発表します。
【例文】
- 国土交通省により、今年の地価が公示された。
第二章 地価の公示の手続(標準地の価格の判定等)第二条 土地鑑定委員会は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。以下「公示区域」という。)内の標準地について、毎年一回、国土交通省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。
【引用元】地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)
(3)公示による意思表示(民法98条)
相手方の場所を知らなかったり、誰が相手方になるのかわからない場合は「公示」によって意思表示ができます。
【例文】
- 先日の入札について、落札者を公示した。
(公示による意思表示)第九十八条 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
【引用元】民法(明治二十九年法律第八十九号)
(4)法務省の登記(不動産登記、商業・法人登記、債権譲渡登記、動産譲渡登記、成年後見登記)
(5)民事訴訟における公示送達
公告の特徴
公告の特徴は以下の通り。
| 誰が公告をするのか? | 国や地方公共団体の機関 もしくは、法律上の義務のある私人 |
| 誰に対して公告するのか? | 広く一般の人々 |
| 法令上の根拠は? | 法令などで決められている |
| 公告をすることで、何が起こるのか? | 場合によっては、一定の法律的な効果が現れることがある
※法律上の効果が現れる場合はあらかじめ法令で決められている |
公告の具体的使用例
【国や地方公共団体による公告】
(1)新しく成立した法律や法律の改正を、国官報で「公告」する。
【参照】インターネット版 官報
(2)新しく成立した条例や条例の改正を、地方公共団体の公報で「公告」する。
【参照】東京都 公報
【法律上の理由による私人の公告】
(3)会社法で決められた公告(決算公告など)
告示の特徴
告示の特徴は以下の通り。
| 誰が告示をするのか? | 国または地方公共団体などの公的機関 ※民間機関は含まれない |
| 誰に対して告示するのか? | 広く一般の人々 |
| 法令上の根拠は? | 法令などで決められている |
| 公告をすることで、何が起こるのか? | 場合によっては、一定の法律的な効果が現れることがある 法律的な効果が現れる場合はあらかじめ法令で決められている |
法律や行政規則、行政処分、行政指導などを発信する場合に「告示」という言葉が使われます。
告示の内容は、官報や公報で発表されます。
告示の具体的使用例
(1)国の機関が担当している仕事についての告示
第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
(2)選挙における投票区・開票区の告示
衆議院の総選挙と、参議院の通常選挙以外のすべての選挙における情報の開示については、「告示」が使われます。
(投票区)第十七条 投票区は、市町村の区域による。2 市町村の選挙管理委員会は、必要があると認めるときは、市町村の区域を分けて数投票区を設けることができる。3 前項の規定により、投票区を設けたときは、市町村の選挙管理委員会は、直ちに告示しなければならない。
【引用元】公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)
(3)帰化の許可の告示(国籍法第10条)
(4)土地収用法上の事業認定の告示(土地収用法第26条)
(5)都市計画の告示(都市計画法第20条第3項)
(6)文部科学省による学習指導要領の告示
入札等の公示・公告はどんな種類がある?

入札等の自治体ビジネスに関する情報は、ほとんどが公示・公告で発表されます。
公示・公告されるのは、入札の実施に関する情報から、中止の情報、落札者決定の情報、今後の発注予定など、入札に参加しようと考えている方にとって非常に重要な情報ばかりです。
自社にとって有利な「勝てる」入札案件は、いつどこで発表されるかわかりません。
入札の公示・公告情報は、見逃さないようにこまめに、効率よくチェックするのが受注率アップの近道です。
入札等に関する公示・公告には、次のような情報があります。
どのような情報が出されるのか、まずは基本をおさえておきましょう。
| 入札等が行われる情報 | 入札公示・公告、企画公示・公告、公募公示・公告など |
| 入札等が中止された情報 | 中止公告 |
| 入札等の内容が変更された情報 | 訂正公告 |
| 誰が落札もしくは随意契約をしたかについての情報 | 落札公示・随契公示 |
| 今後どのような入札が行われるかについての情報 | 発注見通し |
入札の情報を見逃さない!公示情報の集め方4つ

入札に参加するための意思表示や手続きをしたとしても、入札の情報を個別に通知することはありません。
国民の税金を財源とする入札は、何よりも公平性と透明性を重視しており、個別通知すると公平性が損なわれるためです。
ただ入札に勝つためには、漏れのない情報収集が欠かせません。
勝てる入札案件はいつどこで公示されるかわからず、仮に見つけたとしても準備期間が足りずに間に合わない可能性もあるためです。
官公庁が積極的に発信している、入札等の公示・公告を見逃さずに集めるにはどのようにすれば良いでしょうか?
入札等の公示・公告の集め方には、大きく分けて4種類の方法があります。
- 公式サイトや自治体の運営するサイトを検索する
- 官公庁で掲示されている情報を読む
- 官公庁の担当者へ直接ヒアリングする
- 民間の入札情報サービスを利用する
詳しくみていきましょう。
①公式サイトや自治体の運営するサイトを検索する
公式サイトや自治体の運営するサイトを検索する方法は、最も費用のかからない方法です。
中央政府も地方自治体もIT化を強く進めており、ほとんどの情報がWeb上で得られるためです。
内閣府が発した「Web サイト等による行政情報の提供・利用促進に関する基本的指針(平成27年)」や、総務省が発した「地方公共団体におけるオンライン利用促進指針(平成30年5月31日)」を見ると、政府の姿勢がよくわかります。
いずれも、調達情報(入札などの情報)をWebサイトで発信するよう推進するとあり、一読するだけでIT化の流れが強くなっているとわかるでしょう。
インターネットで入札等の情報を集めるには、個々の行政機関や団体のホームページをひとつひとつチェックするのが基本的な方法です。
入札を行う多くの行政機関や団体では、「入札・調達案件等」などといったページで逐一情報をアップしています。
ただ、勝てる案件を探すには、「全国的」に「すべての発注機関」を「高い頻度」で探すのが重要なポイント。
ひとつひとつホームページを探す方法では、非常に多くの時間と手間がかかってしまいます。
次のようなサイトやサービスを利用すると、ある程度の手間が省けます。
| 調達ポータル | 国の省庁の入札等の情報を一括管理している公的なサイト
|
| 東京電子自治体共同運営サービス | 地方自治体が共同運営している入札情報サイト |
②官公庁で掲示されている情報を読む
公示・公告は官報や広報などに掲載され、紙の形でも掲示されています。
法令などの政府情報は国立印刷局の掲示板にも、毎日更新されたものが掲示されます。
地方自治体であれば、市役所や県庁などの該当部署に掲示されている場合もあるでしょう。
こうした施設が非常に近くにあるのであれば、営業に訪れるついでにチェックするのも悪くありません。
ただ、全国を視野に入れて自治体ビジネスを行おうと考えている場合は、情報を網羅するのは物理的に不可能となってしまいます。
原則はWeb上での情報収集とした方が確実です。
③自治体の担当者へ直接ヒアリングする
自治体の担当者から入札情報をヒアリングするのも、公示・公告を集める1つの手段です。
「自治体へ営業?」と違和感を持つかもしれませんが、「営業」ではなく「地域課題のヒアリング」と言い換えれば理解しやすいかもしれません。
自治体の担当者は常に地域課題の解決を考えており、民間の力を借りて課題解決が進むのならば、むしろ営業行為を歓迎してくれる場合もあるのです。
とはいえ自治体への営業は、民間同士の営業と大きく仕組みが異なるため、無策で挑むのはおすすめしません。
自治体の組織制度、財源、業務への姿勢、スケジュール、担当者の考え方などについて情報を得たうえで訪問したほうがよいでしょう。
④民間の入札情報サービスを利用する
より全国的に入札の公示・公告情報を集めたいのならば、民間の入札情報サービスを利用するのもおすすめです。
民間の入札情報サービスには、無料のサービスと有料のサービスがあります。
無料の情報サービス:Googleアラート
無料の検索サービスの中では、「Googleアラート」が使いやすくおすすめです。
Googleアラートは、Googleが提供している機能の一つ。
キーワードを登録すると、そのキーワードを含む情報がウェブ上に流れた際、自動的に通知してくれます。
例えば、「公示」「公告」などのキーワードを登録しておくと、自治体がホームページで出した公示や公告の情報が自動的に抽出されます。
お目当ての自治体がある場合は、自治体の名前を登録しておくとさらに精度の高い情報が得られます。
有料の情報サービス:NJSS(エヌジェス)など
より使いやすく精度の高い情報が欲しいのならば、有料の情報サービスを活用するのがおすすめです。
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気になる方は以下の記事も参考にしてみてください。
「入札情報速報サービスNJSSの評判は?料金・使い方についても紹介」
公示、公告の違いを理解して入札に参加しよう

「公示」「公告」「告示」という言葉の違いや、共通点、意味などについて解説しました。
これらの言葉に共通するのは、多くの人々に平等に情報を発信するという点です。
官公庁は日々入札情報などを積極的に発信しています。
近年は電子政府化・電子自治体化が進んでおり、インターネットで入札情報を集めることが容易になってきました。
公示・公告の違いを理解し、入札情報の収集に役立てましょう。

