入札方式の種類は?公募方法は?わかりやすく徹底解説!

目次
はじめに
そもそも「入札」や「公募」とはどういう意味でしょう?
官公庁ビジネスには、官公庁の専門用語が数多くあり、わかりにくいと思われる方がほとんどだと思います。
ここでは、入札について基本からしっかり説明いたします。
入札の定義
「入札」とは、競争売買のひとつです。
ひとつの官公庁が、複数の事業者と交渉して売買を決めます。
官公庁が、複数の事業者の中でどの事業者と売買契約をするかを決めるために、複数の事業者同士に競争してもらう方法が「入札」です。
競争の仕方には、いくつかの方法があります。
広く公募して競争する事業者を集めたり、官公庁が競争する複数の事業者を指名したりします。
官公庁は、どの方法で「入札」を行なっても、公平性と透明性を重視したシステムで行う義務があります。
入札方式とは?
国の省庁や地方自治体といった官公庁の入札においては、次のような段階があります。
入札について公示する前に、「今回の入札はどのような入札にするのか?」について、官公庁の中で決定します。
主に「契約方式」「入札方式」「落札者選定方式」「支払い方式」があります。
✔︎ 入札方式とは「入札の際の入札参加者を選ぶ方式」のことです。
契約方式 | 契約はどんな内容であるのか?についての方式です。
例えば、 などです。 |
入札方式 | 受注契約の競争に参加する参加者をどのように選ぶか?という方式です。 広く選ぶのか、それとも官公庁が選ぶのかといった方式です。 公募による入札、指名による入札などがあります。 |
落札者選定方式 | 入札の際に、落札者をどのように選ぶのか?についての方式です。 価格の安さで決めるのか? それとも仕事の質や技術者で決めるのか? など様々な選定方法があります。 |
支払い方式 | 支払いの方法についての方式です。 |
官公庁が発注する仕事は、様々な種類があります。
建物の建築や道路の整備などの土木建築だけでなく、物品の購入やリース契約などもあります。
最近は、行政のIT化や、官公庁の仕事の大規模なアウトソーシングも行われています。
そのため、上記の「契約方式」「入札方式」「落札者選定方式」「支払い方式」は、それぞれ多様な方法をとり、組み合わされています。
※詳しい指示は、入札ごとに毎回違います。
※入札の募集の際の書類に書かれているので、チェックをお勧めします。
入札の歴史
日本国内の競争入札は、400年以上の歴史があります。
河川の改修、干拓、埋め立て、かんがい工事の必要性がありました。
多くの労働者を集めて工事を行なっており、競争状態になっていたようです。
しかしながら、同時に、手抜き工事や談合などの問題が生じていました。
入札の歴史は、談合対策のために様々な方法が工夫されてきた歴史でもあります。
広く公募して入札参加者を決めるのか、それとも官公庁が先に複数の事業者を指名して入札参加者を限定するのか、入札せず、官公庁直接ひとつの事業者を決めてしまうのか、時代の流れとともに紆余曲折します。
1990年代前半に、日本国内ではゼネコン汚職問題が起こります。
また、外国企業も日本国内の官公庁ビジネスに参入したいと圧力がかかります。
そのような時代の流れの中、「広く公募して入札参加者を決める」方法が原則となります。
年々、官公庁ビジネスにおける公平性と透明性が一層求められるようになっています。
入札における公募方法は?
入札においては、広く公募する方法が原則です。
それではどのように広く公募するのでしょうか?
公募は、不特定多数の事業者を募集する方法です。
そのため、なるべく多くの事業者に入札の内容を知ってもらう必要があります。
地方自治法施行令第167条の6第1項にも、入札内容の公告についての決まりがあります。
公告内容は次のとおりです。
入札に参加するために必要な条件・資格 |
入札が行われる場所 |
入札が行われる日時 |
その他、入札に必要な情報 |
現在は、行政窓口のIT化が進み、公式サイトなどで入札情報を集めることができます。
入札方法の種類は大きく3つ
入札方法の種類には大きく3つあります。
①一般競争入札 | 広く公募して、入札に参加する方法です。 |
②指名競争入札 | 官公庁が、先に複数の事業者を選び、その中で入札する方法です。 |
③随意契約 | 官公庁が直接選ぶ方法です。 随意契約というと、入札をせずに行う契約が多いのですが、技術提案をする場合など、競争性のある随意契約もあります。 |
それでは詳しく説明します。
①一般競争入札
入札の原則は、この一般競争入札です。
一般競争入札以外の入札方法を行う場合は、次の条件が必要です。
- 緊急性のある特別な理由
- 業務の内容上一般競争入札では目的が達成できない特別な理由
などです。
原則であるため「一般」競争入札という名称になっています。
国や地方自治体といった官公庁の中で、一般競争入札が原則とされる理由は次のとおりです。
✔︎ 誰もが同じ条件で入札に参加できるから、公平である |
✔︎ 落札者を選ぶ官公庁の判断について、透明性が高い |
✔︎ 国内だけでなく、海外の事業者も参加できるため、より安くより良い契約ができる。 |
一般競争入札に参加する事業者にも次のようなメリットがあります。
【入札に参加する事業者側のメリット】
✔︎ 入札参加資格審査をパスすれば、未経験でも入札に参加できる。 |
✔︎ 入札参加資格審査をパスすれば、大企業や官公庁ビジネスの実績の多い事業者とも、対等な立場で競争できる。 |
✔︎ 一般競争入札で実績を作れば、その官公庁や他の官公庁でもその実績が評価され、取引可能性が広がる。 |
これから官公庁ビジネスを始めたい事業者の方々には、取り組みやすい入札方式になります。
②指名競争入札
指名競争入札の名称の意味は次のとおりです。
指名 | 官公庁が事業者を「指名」することです。 |
競争 | 「指名」した複数の事業者を、公平に「競争」させることです。 |
指名競争入札は、あくまでも例外的な入札です。
①の一般競争入札との違いは、入札参加者の選び方です。
入札参加者があらかじめ限られてしまい、機会均等とはいえない入札です。
例外的である、指名競争入札を行う際には次のような条件が必要です。
- 一般競争入札にすることが難しい場合
- 入札参加者がそもそも少なく、一般競争入札を行う必要がない場合
- 一般競争入札にすることで、むしろ不利になってしまう場合
などです。
国や地方自治体といった官公庁が、指名競争入札を選ぶことで次のようなメリットがあります。
✔︎ 時間の節約ができる。 |
✔︎ 事務的な負担が減る。 |
✔︎ 競争入札参加者をあらかじめ選ぶことができるので、不適格な事業者を排除することができる。 |
また、入札に参加する事業者側にも次のようなメリットがあります。
【入札に参加する事業者側のメリット】
✔︎ 時間の節約ができる。 |
✔︎ 官公庁側の目的がわかりやすい。 |
✔︎ ライバル事業者が少ない。 |
③随意契約
随意契約の「随意」とはどのような意味でしょうか?
随意 | 官公庁が制限を受けないことです。官公庁の思いのままであるという意味もあります。 |
随意契約は競争入札を経ないで官公庁が決定する契約です。
随意契約には次のような随意契約があります。
競争性のある随意契約 | 性質上、一般競争入札や指名競争入札の手続きを取りません。
随意契約を結ぶ以前に、複数の事業者に競争してもらう契約です。 プロポーザル方式やコンペ方式など、まだ事業の流れも明確に決まっていないタイプの技術提案などに多い契約です。 |
競争性のない随意契約 | 官公庁が思いのままに事業者を選ぶ契約です。 |
競争性のある随意契約、競争性のない随意契約は両者とも官公庁で結果を公表しています。
(具体例:外務省 予算執行等に関する情報開示 )
随意契約は、機会均等の原則に反して、公平性や透明性に欠けた契約です。
そのため、官公庁が随意契約で取引する場合は、とても限定されています。
(地方自治法第234条第2項、地方自治法施行令第167条の2第1項)
- 契約金額があらかじめ法律などで決めた基準以下である場合
- 契約の内容が、競争入札に適さない場合
- 緊急性が高い場合
- 競争入札を行うとむしろ不利になってしまう場合
- 時価に比べて著しく安く契約してもらえる場合
- 入札者がいない場合
- 落札者が契約を結んでくればい場合
などです。
国や地方自治体といった官公庁が、指名競争入札を選ぶことで次のようなメリットがあります。
✔︎ 緊急時でもすぐに契約できる。 |
✔︎ 事務的な負担が減る。 |
✔︎ 先進的な技術力等の能力や特定の資産をもつ事業者に直接依頼できる。 |
また、入札に参加する事業者側にも次のようなメリットがあります。
【入札に参加する事業者側のメリット】
✔︎ 時間の節約ができる。 |
✔︎ 官公庁側の目的がわかりやすい。 |
落札者の決め方
入札を行う際、国の省庁や地方自治体といった官公庁はどのように落札者を決定するのでしょう?
大きく次の3つに分けられます。
価格競争方式 | 価格の安さのみで落札者を決定する方式です。 |
総合評価落札方式 | 価格の安さだけでなく、技術力や環境対策など仕事の質に対しても評価します。 |
技術提案・交渉方式 | 高度な技術力を求める場合に、業務の流れが不確定で発注者側が仕様を作成できない場合に、落札者を決定する方式です。 |
官公庁が落札者をどのように決定するか?については、各官公庁が事前に決めて公開しています。
入札ごとに決定方法が違いますので、必ず官公庁が公表する入札資料を参考にしてください。
入札の流れ
それでは、入札はどのような流れで行われるのでしょうか?
入札の流れの基本を把握すると、他の官公庁入札の際にも応用することができます。
原則である一般競争入札の流れは次のとおりです。
公募・公告 | 官公庁が、入札参加者を公募で集めます。(指名競争入札の場合は、官公庁が選びます。) |
資格審査 | 官公庁が、入札参加者が入札する基準を満たしているか審査します。 |
入札 | 入札に参加する事業者が、官公庁に案件を提示します。 |
落札 | 官公庁が、最も条件がよかった事業者を落札者として選びます。 |
契約 | 官公庁と落札者が契約を結びます。 |
※基本的な流れは同じですが、官公庁によって、入札案件により細かな違いがあります。
必ず、入札関係書類を確認しましょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
官公庁ビジネスにおける「入札」には、様々な専門用語があります。
しかし、すべての専門用語には、意味と理由があります。
ひとつひとつ基礎から確認し、意味と理由を一度理解してしまえば、
他の様々な官公庁ビジネスに応用ができます。
この機会に入札について確認してみることをお勧めします。