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自治体予算獲得への道|第1話 予算獲得への第一歩

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自治体予算獲得への道|第1話 予算獲得への第一歩

2024.07.02

官民連携コラム

目次

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今日からここに連続寄稿させていただくことになりました、福岡市役所現役公務員(元・福岡市財政局財政調整課長。現在は福岡地区水道企業団に派遣中)の今村寛と申します。

昨年、「お役所ムラの歩き方」という表題で役所の「中の人」から見た打ち明け話的な話題提供をさせていただきましたが、今回の寄稿はその中でも私の最も得意とするテーマ「自治体の予算編成」に焦点を当て、前回の寄稿でも関心の高かった「自治体の予算はどのように決まるのか」「どうすれば自治体の予算を獲得することができるのか」「自治体の予算を獲得するために民間企業としてできることは何か」という点を意識しながら、自治体予算編成のプロセスやその過程で議論となるポイントなどをご紹介し、皆さんの疑問や悩みの解決に寄与したいと思います。

なぜ予算獲得を目指すのか

さて、そもそも自治体において予算獲得に、なぜそれほどの眼目を置かなければいけないのかというところを共有していきましょう。

民間企業の皆さんからすれば、自治体から民間企業に仕事として発注する予算がなければビジネスにならないという意味で自らの業務に関連する予算を獲得することは必須の命題だろうと思いますが、実は自治体の各職場、職員にとっても、自分たちのやりたい事を予算として獲得することには重要な意味があります。

私たち自治体職員は、住民の福祉向上のために多岐にわたる行政分野で様々な業務、事業を行いますが、その原資となるのは市民の皆さんからお預かりした税金です。

税金は、徴収する段階では何に使うという色付けは行われていませんが、その使途や額を勝手に私たち自治体職員が決めることはできず、市民から選ばれた議員で構成する議会が税金の使い道として承認した内容に沿って初めて使われることになっています。

この承認を得るプロセスが自治体で毎年繰り広げられている「予算編成」と言う名の資源争奪戦であり、予算案が庁内での議論を経て議会に提出され議決される過程では、多岐にわたる政策分野での様々な施策事業のどこにどのくらいの公金を投じるのか、どのような方法で行うことが効率的かつ効果的で実現可能性が高いか、という点が議論され、合意が形成されていきます。

この議論の中で、この事業を行政が行う正当性が庁内及び議会(=市民)から承認されるわけで、そのお墨付きをもらうことで、事業に必要な財源の確保だけでなく、事業推進上必要な関係者の協力、市民からの期待や信頼などを得て、事業の推進に弾みがつくというわけです。

予算がなくてもできることはたくさんありますが、私たち公務員としては、やりたいことをやるにはまず予算を獲得するためのプロセスに勝利し、承認を得るということが一番の近道かつ王道なのです。

予算編成のスケジュール

では、予算獲得に向けてどのような道をたどることになっているのでしょうか。

自治体の予算は4月で始まり3月で終わる「年度」で編成、執行されており、原則としてその1年間で得られる収入を1年間でどのように支出するかを前年度末の3月に開く議会で「当初予算」案として審査し、承認しています。

3月の議会で予算案を審議するには2月には予算案を議会に提出する必要があり、このため自治体では通常11月から1月末くらいの期間をかけて翌年度の当初予算案を編成します。

どの自治体でも現場がやりたいことがすべてできるだけの財源が潤沢にあるわけではないので、11月から1月まで3ヶ月もかけて行われるのは予算案を束ねて議会に提出する担当課(通常は財政課)での「査定」と呼ばれる作業。

現場が必要だと積み上げてきた事業費の積算根拠を一つ一つチェックし、事業の必要性、緊急性、重要性、行政が行う妥当性、費用対効果、効果発現の可能性、経費積算の正確さ、事業実施の実現可能性など、様々な側面から現場への質疑を重ね、詰めが甘いものをはねのけていく、血も涙もない鬼のような所業です。この厳しい査定を潜り抜けた精鋭だけが1月末に取りまとめられる予算案に記載され、当初予算案として議会の審査を受けるのです。

緊急性の高いものや、事情の変更が生じ手法や経費、財源等に変更が生じたものについては、年度の途中で予算を補正し、当初予算にないものを予算として計上し執行することが可能ですが、その規模は当初予算に比べればわずかなもの。

年度当初に見込む1年間の収入を計画的かつ戦略的に支出し、自治体として多岐にわたる政策の成果を総合的に上げていくためには、当初予算での全体を見渡したトータルの議論が不可欠なので、この当初予算案に盛り込むことが原則となっています。

夏を制する者は予算編成を制す

では、現場でやりたいことがある場合には、10月までにその必要経費を積み上げ、予算要求をすればいいのかというと、そうではありません。

11月から1月まで繰り広げられる財政課の鬼のような査定に耐えられるものとして自らの事業を磨き上げる必要がありますし、ほとんどの自治体では予算編成を効率的に行うために、予算要求を行う部局単位で一定の枠をはめ、その範囲内に現場の要求を抑える調整を求めています。

その現場同士、部局内での調整はだいたい9月から10月に行われ、そこで勝ち残った者だけが財政課への予算要求を許される、というプロセスを考えると、次年度にやりたいことを企画立案し、事業費を積算したり、協力を得たい関係者との調整を水面下で始めたりするのは遅くとも夏場、7~8月までにはということになります。

翌年4月以降のことを夏場から考えるというのは気の早い話ですが、市民から預かった税金の使い道として多くの市民に納得してもらう無駄のない使い道とするためには、そのくらいの丁寧なプロセスが必要なのだとご理解ください。

まずは日ごろのコミュニケーション

私は財政課職員として現場からの予算要求を査定する立場でこの予算編成作業に9回携わりましたが、いつも思っていたのは普段からのコミュニケーションの重要性です。

11月の予算要求の時点で初めて知る話を、多忙を極める予算査定の時期に他の事業の査定作業と並行してヒアリングし適切な判断を下すというのはなかなか難しいですし、もう少し早い段階で話を聞いていれば違った選択ができたというものもたくさんありました。

逆に、早めに話を聞いていたことで、事業構築に向けて一緒にアイデアを出し、よりよいものに磨きあげて予算要求を受け取るということができた事例もあります。

残念なのは、予算編成の時期に資料提出やヒアリング、協議などであれだけ毎日のように財政課に押し掛けていた現場の職員たちが、1月末の予算案確定のあと潮が引いたように来なくなり、なしのつぶてになってしまうことです。

予算編成で行った議論が実際の予算執行時に現場でどのように活かされたのかを知ることなく次年度の秋以降に再会することになるわけですが、そこでのフィードバックが十分でないと、秋以降の予算編成の時期にまた同じ議論を繰り返すことになります。

財政課も1月末に予算案を確定した後は少し繁忙が緩みますので、そこから夏までの間に、予算編成の間に片付かなかった課題の解決に向けた建設的な議論や、そのための調査検討について情報を共有し、対話していくことができるのに、なかなかその機会、時間を活かす現場は少なかったように思います。

まとめ

困ったときに財政課に駆け込むのではなく、日ごろから事業の進捗や課題、その解決に向けた方向性など、結論を得るための議論ではなく、その前段として情報共有、認識の共有、立場の共有を行う対話がもっとあれば良いと考えております。

このことは、財政課職員と現場との関係性だけでなく、私たち公務員と市民、民間事業者との関係にも言えることだと思います。

 

本記事の執筆者
今村 寛(福岡市職員)
財政課長時代に培った知見を軸に出張財政出前講座を全国で展開し約10年間で220回を数える傍ら、市職員有志によるオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰。「対立を対話で乗り越える」を合言葉に、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。著書/ 『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと? 』(ぎょうせい),『「対話」で変える公務員の仕事~ 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』( 公職研)。

 


 

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