公民連携における民間委託とは?
目次
はじめに
国や自治体では、様々な分野での公民連携が進められており、その手段の1つが民間委託です。
- そもそも民間委託とはどのような制度なのでしょうか?
- なぜ民間委託が拡大しているのでしょうか?
- 民間委託とPFI指定管理者制度にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは民間委託について解説します。
民間委託とは
民間委託とは、国や自治体が行う業務を契約に基づいて民間事業者に委託するもので、公民連携の中で最もポピュラーといえる手法です。
地域課題や住民ニーズの多様化を背景に、民間事業者のリソースやノウハウを活用することで、より効果的で効率的な行政サービスを提供することを目的としています。

民間委託の契約形態
民間委託は「請負契約」や「準委任契約」に該当します。
| 請負契約 | 民法632条 | 当事者の一方(発注先:民間事業者)がある仕事を完成することを約し、相手方(発注元:国や自治体)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約す契約 |
| 準委任契約 | 民法656条 | 当事者の一方(発注元:国や自治体)が法律行為でない事務行為をすることを相手方(発注先:民間事業者)に委託し、相手方がこれを承諾する契約 |
いずれも民法を根拠とする契約です。
民法では、契約自由の原則にもとづき、契約の相手方や契約方式を自由に選ぶことができますが、国や自治体が行う契約には一定の制約があります。
公平性の観点から一般競争入札が原則とされているためです。
担当者などの判断で自由に相手方を選び、契約をすることはできない仕組みになっています。
包括的民間委託
従来の民間委託では、部署や業務ごとに個別の委託契約を結び、原則的に単年度契約とされていました。
包括的民間委託とは、部署や業務区分を超えて複数の業務をまとめて委託契約を結ぶ民間委託の手法です。
受託した民間事業者が創意工夫やノウハウの活用により効率的・効果的に運営することを目的としています。
また、具体的な業務を示す仕様発注ではなく満たすべき要件や要求水準を示す性能発注が採用される場合や、複数年度契約となる場合が多くあることが特徴です。
そのため、目標の達成に向けて、民間事業者は自由な裁量により業務を実施することができ、公共施設の管理などで採用されています。
民間委託の対象となる仕事
国や地方自治体入札等を経て民間事業者に発注する仕事は、大きく分けて「工事」、「物品」、「役務」の3つに分けられます。
このうち民間委託で対象となるのは3番目の「役務」です。
役務とは、さまざまなソフト事業やサービスのことをいい、窓口業務、学校給食の調理、ごみ収集、イベント運営、施設管理など多岐にわたります。
具体的にどのような業務があるのか、いくつかの事例を紹介します。
窓口業務
市民サービスの向上や事務の効率化を目的として、多くの自治体で窓口業務の民間委託が導入されています。
神奈川県藤沢市では、2022年に窓口業務における業務改革を踏まえた民間委託が開始されました。
業務マニュアルの作成や業務プロセスの見直しを行い、繁忙期の待ち時間短縮や市職員の重点課題への配置転換に取り組んでいます。
学校給食の調理
給食調理員の減少などを背景に、多くの自治体で学校給食調理業務の民間委託が導入されています。
福岡県福岡市では、試行期間を通じた検証を経て、2014年度から給食調理業務や食器の洗浄、施設の清掃等業務の民間委託が導入されました。
試行にあたっては、衛生管理・安全面、運営体制など様々な視点からの検証が行われ、民間委託でも「安心・安全でおいしい給食」が提供できていることが確認されました。
イベント運営
自治体では、観光プロモーションや町おこしに関わるもの、就業希望者と企業とのマッチングを図るものなど、様々な主催イベントが行われています。
イベント運営では企画や集客などのノウハウが求められることから、より効果的に実施するために委託による民間活力の導入が進められています。
なぜ民間委託が拡大しているのか?

民間委託拡大の流れ
民間委託の拡大は、平成13年の小泉政権による構造改革が起点とされます。
「民間でできることは、できるだけ民間に委ねる」という方針のもと
民間委託が推進され、対象となる分野や業務も拡大していきました。
住民ニーズの多様化
民間委託が広がる背景に、公共サービスに対する住民ニーズの多様化があります。
少子高齢化による介護ニーズ、女性の社会進出による子育て支援へのニーズ、自然災害の頻発による安全安心に対するニーズなど、住民のニーズは多様化し、民間事業者のノウハウや創意工夫が必要とされています。
財政問題
一方で、国や自治体は財政問題を抱えています。
行政支出の無駄を省くことは、国や自治体の大きな目標です。
そのため、コストの視点においても、民間企業のノウハウやアイデアに期待が高まっています。
民間委託が難しい業務
行政サービスには、住民の生命や人権に係る重要な業務があります。
そのため、すべての業務を民間に委託することはできません。
民間委託が難しい業務には、「法律上、民間委託ができないとされている業務」「裁量が必要な業務」「統治作用に深く係る業務」があげられます。
【民間委託が難しい業務】
| 業務 | 内容 |
| 法律上、民間委託ができないとされている業務 | 国や地方自治体などの官公庁が、直接行わなければいけないと法令上決められている業務です。 |
| 裁量が必要な業務 | ルーティン作業は民間委託に適しています。 しかし、ある程度の裁量や判断が必要な業務は、民間委託に適していないことがあります。 |
| 統治作用に深く係る業務 | ①住民の権利義務についての業務などは、民間委託が適していません。 ただし、近年では、守秘義務などの必要な措置により民間委託が可能とされる例もあります。 ②公の意志決定など住民に直接的・間接的影響の大きな業務については、民間委託が適していません。 ③利害対立が激しく公平な審査・判断が必要とされる業務については、民間委託は適していません。 |
民間委託と指定管理者制度・PFIとの違いは?
公民連携とは
公民連携とは、国や地方自治体と民間事業者が協働して公共サービスを提供するための方法のことです。
民間委託、PFI、指定管理者制度などのさまざまな事業手法が含まれ、その総称をいいます。
民間の持つ多様なノウハウや技術を活用して、限られた予算を効率よく使ったり、サービスを向上させたりすることが目的です。
「官民連携」やPPP(Public Private Partnership:パブリック・プライベート・パートナーシップ)と表現されることもあります。

官民連携については、こちらもご一読ください。
官民連携とは?手法、背景、今後の見通し、具体例などについて紹介|自治体ビジネスドットコム
指定管理者制度とは
指定管理者制度とは、公の施設の運営を、民間企業などに任せる制度です。
指定管理者制度ができるまでは、公の施設の運営は公的な団体に限られていました。
平成15年の地方自治法改正で指定管理者制度が始まり、民間事業者への公的施設の管理権限や包括的な管理運営の委任が可能になりました。
民間委託と指定管理者制度は次のような違いがあります。
【根拠法が違う】
| 民間委託(業務委託) | 民法が根拠法 |
| 指定管理者制度 | 地方自治法が根拠法(地方自治法244条) |
【法律上の性質が違う】
| 民間委託(業務委託) | 官公庁と民間企業との契約 |
| 指定管理者制度 | 自治体が民間企業を「指定」する行政処分 |
指定管理者制度については、こちらもご一読ください。
指定管理者制度とは?目的・委託との違い・メリット・デメリットを解説?|自治体ビジネスドットコム
PFIとは
PFIとは、Private Finance Initiativeの略称です。
平成12年に成立したPFI法にもとづく制度で、公共施設等の整備、維持管理、運営等において、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法です。
従来の方法では、設計や建設、維持管理は別々に事業者を選んで契約を結び、運営主体はあくまでも国や自治体でした。
PFI制度により、設計から維持管理、運営まで一括して発注し、企画や提案も民間事業者に委ねることが可能になりました。
民間委託とPFI制度は次のような違いがあります。
【性質の違い】
| 民間委託(業務委託) | 業務ごとに個別に民間へ委託 |
| PFI制度 | 民間が整備した施設を民間が運営 |
【根拠法が違う】
| 民間委託(業務委託) | 民法が根拠法 |
| PFI制度 | PFI法が根拠法 |
【資金調達が違う】
| 民間委託(業務委託) | 公的資金のみを使う |
| PFI制度 | 資金の一部を金融機関から融資してもらうことも可能 |
おわりに

いかがでしたでしょうか?
民間委託は、公共サービスに対する住民ニーズが多様化する中で、様々な分野で進められています。
公民連携や自治体ビジネスにおいても重要でポピュラーな手法ですので、是非この機会にご確認ください。
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