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自治体予算獲得への道|第3話 役所が民間に期待すること

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自治体予算獲得への道|第3話 役所が民間に期待すること

2024.07.30

官民連携コラム

目次

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自治体の予算編成に関わるには

元・福岡市財政局財政調整課長による自治体の予算編成に関する打ち明け話「自治体予算獲得への道」、これまでは自治体における予算編成のスケジュールやちょうど今の時期の留意点などについてざっくりとご紹介しました。

今回は、この時期、このメルマガをお読みの民間事業者の皆さんが何をすればいいのか、私たち自治体職員が皆さんに期待していることを書きたいと思います。

政策推進・課題解決への期待

私たち地方自治体は、福祉、教育、まちづくりなど多岐にわたる政策を推進することで市民の安全で快適な暮らしの維持や社会課題の解決に努めています。

この取り組みに必要な経費について市民から預かった限られた財源を様々な施策事業に振り分けるのが予算編成です。

それぞれの施策事業の構築にあたってはその目的や到達すべき成果についてきちんと考えたうえで、その実現に向け何をやるか、どのようにやるか、どのくらいやるかという具体的な手法を検討する、という話を第2話で書きましたので、まだお読みではない方はぜひご覧ください。

 

自治体予算獲得への道|夏までに職員がすべきこと

 

私たちが民間事業者の皆さんに期待するのは「何を、どのように、どのくらいやるか」の検討におけるアドバイスです。

何を課題と捉え、どのような姿を実現したいかは自治体の側でしっかり考えなければいけませんが、それを実現する手法は様々です。

様々ある手法の中から効果的でかつ効率的なものを選択するにはたくさんの情報、最新の情報が必要になりますが、自治体職員の情報収集は役所系が中心で国や自治体で取り組まれてきた過去の事例に囚われがちです。

目新しいものがすべてよいというわけではありませんが、いろんな角度、視点からものを見ると今まで見えなかったものが見えることがあります。

そのため、役所とは違う情報収集のアンテナを持った民間事業者ならではの、民間での取り組みや最近はやりの官民連携手法も含め、また最近の技術革新なども押さえた事業手法、内容の提案を期待したいと思います。

経費節減・財源確保への期待

私たち地方自治体職員の感度が低い分野に「経済性」があります。

自治体は組織として営利を目的としておらず、収入を上げ支出を抑え、利潤を確保するという概念に乏しいため、私たち自治体職員はどうしても経済効率の追求に対する構えがおろそかです。

しかしながら限られた財源を有効に活用する視点からは今の仕事をもっと効率的に、経済的に実行する方策を積極的に考え、創意工夫を凝らすべきであり、各部署に配分される財源が年々縮小するなかでいよいよその必要性が高まっています。

そこで経済性について一日の長がある民間事業者の皆さんが日頃から実践されていることや、すでに民間事業者向けに提案している経費節減や業務効率化のツールなどをご提案いただきたいのです。

財政課が示す予算の削減に応じるために経費を節減しなければならないが、施策事業をやめるわけにはいかない、という悩みは今やすべての自治体のすべての担当者が頭を抱える悩みの種ですから、民間事業者からの提案をいつでも受けたいと思っています。

そして、ここで一点突破できればブルーオーシャンが広がっています。

なぜなら地方自治体の事務は同じ法令に基づき同じやり方でやっていることが圧倒的に多く、一つの事務の改善は、他の自治体の改善の手本となり、全国の自治体がそれを真似て採用するようになるからです。

一方、経費節減以外に近年どの自治体でも積極的に取り組んでいるのが財源の確保。広告収入やネーミングライツ、行政財産の貸付など従来からある遊休資産活用手法に加え、ふるさと納税やクラウドファンディングによる特定の施策事業への寄付金、協賛金の獲得など、稼ぐ自治体を標榜し専門チームを設置するなどして財源確保に積極的に取り組んでいる自治体も出てきました。

この分野はわりと新しい事業領域ということで民間事業者からの提案も激しさを増していますが、積極的に取り組めていない自治体、あるいは業務領域もありますので、まだまだ市場としては拡大可能性の高い分野だと思います。

利便向上・付加価値提供への期待

最近、DXという言葉がもてはやされ、自治体界隈でも大流行りになっているのがICTを活用した利便向上や新たな付加価値の提供です。

これも民間事業者においては経費節減と付加価値提供の両面からすでに取り組まれ、例えば窓口まで来て紙に書くという事務は完全に淘汰されていますが、自治体の多くの業務にはまだ残っています。

業務に関連して膨大な情報を収集し保有しているにもかかわらず部門間での連携はおろか当該所属でも情報をストックしているだけで利活用されているケースはごくわずかです。

行政目的で収集したデータの連携やオープンデータ化による官民での利活用が促進されれば、業務の効率化、市民の利便向上はもちろん、新たなサービスの創出にもつながることが期待できますし国もハッパをかけていますが自治体の重い腰はなかなか上がりません。

DX推進には法規制の壁もあり、またシステム開発や現行システムの改修に多額の経費がかかることから大号令がかからなければなかなか取り組むことができないというジレンマはあるにせよ、こんなことができたらいいなという理想の世界を共有することで、その実現に向けた困難を乗り越えていくエネルギーもわいてくるわけですから、民間事業者の方にはぜひその知見を活かした未来志向の提案をお示しいただき、ともに追い求める夢として共有させてほしいと思います。

何に困っているのかがわからない

ところが、政策推進にせよ、経費節減や利便向上の取り組みにせよ、民間事業者から提案する場合、提案に先立って、自治体が何に困っているのか、何を実現したいと考えているのかについてきちんと情報を押さえないといけないのですが、その情報収集は結構難しく、どの部署で誰が何を悩んでいるのかは役所の外から見てもよくわかりません。

また、自治体職員のガードは堅く、現在の仕事がうまくいっていない、成果を出せていないということを口外することはまずありません。

組織内部で課題の整理や目標像がある程度議論され、やろうとすることの方向性が固まってから、それができそうな民間事業者に企画書や見積書の提出を依頼するというのが大まかな流れです。

しかし、この流れの場合、役所側からすれば意外性のある提案を得ることはありませんので、自分たちの知らない最新の情報や技術を反映することはできず、実現できるのはこれまでどこかで誰かがやったことの焼き直しです。

民間事業者からしても何をやるかについてはある程度仕様が固まった中での提案ですから、自らの得意分野を生かせるかどうかはわからず、そもそも声がかからないかもしれません。

せっかく役所にない視点、ノウハウを期待しての提案を民間に求めているのですから、もう少し互いにWIN-WINになれる提案にならないものでしょうか。

お困りごとは何ですか

そういうときは、民間事業者の側から「勉強会」を提案してはいかがでしょうか。

民間事業者自らの事業領域に関係ありそうな地方自治体の施策事業や政策分野について、自治体の担当者から現状や取り組み状況について説明を受ける場を民間事業者の側から提案し設定するのです。

どの自治体でも市民向けに施策事業の説明を行う「出前講座」というメニューがありますので、そういうものを活用するのもいいでしょうし、複数の事業者での共同企画、あるいは業界団体として開催するのも自治体側の心理的ハードルを下げます。

悲しいことに自治体職員は気安く民間事業者に声をかけづらい状況があります。

どうしてあの業者なのか、どうしてうちには声がかからないのか、という類のやっかみから逃れるために自治体職員はなるべく民間事業者と関わらないようにしているのですが、これでは自治体も民間事業者もお互いに有益な情報をつかむことはできません。

まずは同じ事業領域において、現在起こっている事象やそれに対する取り組みをフラットに共有し、その場での質疑や意見交換を通じて互いに相手のことを知ることから始めてはいかがでしょうか。

ここで大事なのは、自治体から仕事をもらうという姿勢ではなく、自治体の困っていることを聞き出し、それを解決する手法を提案し、自治体の課題解決に力を貸すという姿勢です。

自治体は民間事業者の皆さんから声がかかるのを待っています。

閉ざされたドアをノックされても開く勇気のない自治体には未来はありません。

民間事業者の皆さんが外から声をかけることは自治体の未来を占う試金石でもあるのです。

 

本記事の執筆者
今村 寛(福岡市職員)
財政課長時代に培った知見を軸に出張財政出前講座を全国で展開し約10年間で220回を数える傍ら、市職員有志によるオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰。「対立を対話で乗り越える」を合言葉に、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。著書/ 『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと? 』(ぎょうせい),『「対話」で変える公務員の仕事~ 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』( 公職研)。

 


 

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