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自治体予算獲得への道|第2話 夏までに職員がすべきこと

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自治体予算獲得への道|第2話 夏までに職員がすべきこと

2024.07.16

官民連携コラム

目次

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夏を制する者は予算編成を制す

 

元・福岡市財政局財政調整課長による自治体の予算編成に関する打ち明け話「自治体予算獲得への道」第1回配信、皆さんいかがでしたでしょうか。

まだ、読んでいない方は、ぜひ一度ご覧ください。

自治体予算獲得への道|第1話 予算獲得への第一歩

 

初回となる前回は、自治体職員がなぜ予算獲得に血道をあげるのか、またそのスケジュールや自治体内部調整のプロセスについて、ほんのさわりだけですがご紹介させていただきました。

中でも「夏を制する者は予算編成を制す」と申し上げ、今まさにこの時期のコミュニケーションが大事ですよ、というところで終わったわけですが、さて、では「夏を制する」ために今、やっておかなければいけないことは何でしょうか?

予算編成に入る前にすべきこと

予算というのは最終的にはお金の使い道の計画です。

例えば何かの普及啓発イベントをやるとして、会場や機材の借上料、司会者や出演者への謝金、ステージや会場の装飾にかかる委託料、事前広報のための宣伝費、当日配布資料の印刷費など、必要となる経費を積算して「●●普及啓発事業 事業費〇〇〇万円」という形で予算書に記載されることが予算獲得の最終アウトプットですが、ではそのために夏場にやっておくべきことは何でしょうか。

・会場の手配?

・登壇者への出演依頼?

・会場装飾や広報宣伝の見積書徴収?

そんなことよりもまずやるべきことはその予算を執行する目的と、達成すべき成果の確認です。

予算計上には必要経費の積み上げが必要となる以上、その積算根拠を明らかにするために

「何をやるか(内容)」

「どうやってやるか(手法)」

「どのくらいやるか(回数、頻度)」

ということの議論に終始しがちですが、大事なのはその前段として行う「何のために(目的)」「どこまで(成果)」の議論。

「何をやるか」「どうやってやるか」は「何のために」という目的にふさわしいゴールを目指す道筋、手段に過ぎません。

旅行に行く場合に、飛行機か新幹線かという検討に先立ち、まずは「東京に行く」という風に目的地を定めなければ、そこまでの交通手段の検討も、その経費積算もできないのと同じことなのです。

何のためにやるかどこまでやるか

では「何のために」の議論をどのように進めればよいのか。

自治体の行う施策事業の多くは社会が抱える問題の解決です。

「保育所を作るのは待機児童解消のため」、「商店街の振興は地域経済の維持活性化のため」、というように、それぞれの施策事業には必ず目的があり、目指すべき成果があります。

そしてその成果は、その施策事業が対象としている社会的な事象の変化(あるいは維持)によって導かれる「ありたい姿」で表現されます。

「保育所を作って待機児童をゼロにする」、「商店街の空き店舗に新規出店を誘致して来街者を増やす」というように国や自治体が行う事業が及ぼすインパクトで、対象とする社会的な事象に変化を及ぼし、その結果として「ありたい姿」へと状態が変化する(あるいは維持される)ことを目指して、私たち自治体職員はそのためにやるべきことを考え、内容を積み上げて予算を計上し、執行するのです。

「ありたい姿」とは何がどうなっている状態のことを言うのか。

それは現状に比べ、どの程度まで変化すればよいのか。

そこを見定めてはじめて、その変化をもたらすために必要なインパクトとして私たちが行うべきことは何か、という議論が始められるのです。

状況変化に応じたアップデート

予算編成の準備に必要なのは新規事業予算の獲得だけではありません。

限られた財源の争奪戦となる予算編成では、新規事業に財源を振り向けるために既存事業に充当されている財源が草刈り場となることが往々にしてあります。

また、すでに実施している事業については、事業を始めた当初はその必要性や手法の妥当性、他の施策との優先順位などがきちんと議論されていたはずですが、事業実施から年月が経ち、事業を取り巻く環境の変化や事業そのものの実績・成果、自治体としての施策優先順位の変化などにより、その施策事業を今後も今まで通り粛々と進めていけばいいというわけにはいかず、様々な状況変化に対応したアップデートを図る必要があります。

このため、秋から始まる予算編成では既存事業についてもこれまでの実績・成果、環境変化等を踏まえ、施策事業のあり方について議論されます。

こういった議論の中で他の事業よりも優先するものとして必要な予算を獲得していくためには、当該既存事業の成果や課題についてあらかじめ把握し、その対応について検討し、場合によってはその対応策を盛り込んだ予算として要求することなども考えなければいけません。

予算編成においては、その過程では結論が出ないような中期的な課題については次年度予算編成までに時間をかけて議論しましょう、というところで財政課との休戦となることも多く、その際に財政課から提示される宿題を片付けないと予算編成に入れない、ということもしばしばあります。

秋から始まると言われている予算編成ですが、実は常在戦場、常に課題を把握し、アップデートし続けなければならないのです。

政策議論の前倒し

何度も言いますが、予算編成は秋から始まります。

それなのに予算要求の何か月も前からこうした準備をしておかなければならないのはなぜでしょうか。

それは予算計上に際して行うべき議論の範囲が多岐にわたり、また施策事業の数も多数に上るなかで、すべての事業について議論すべき事項をすべて予算編成の時期だけに議論していては時間も足りず生煮えになってしまうからです。

議論するうえで特に重要なのは、必要性、重要性、妥当性の議論です。

金額を計上するかという経費精査は議論の中ではかなり終盤に扱われる話題で、

・当該事業が必要とされる社会背景

・他の事業に優先して予算を計上する政策上の優位性

・地方自治体が主体として事業を実施することが法令や社会通念上支障がないこと、

三つがなければ、金額の精査なんぞ意味を持ちません。

しかし、この三つは、政策の推進手法として「やるかやらないか」を判断する根本にかかわるため避けることができず、市民が納めた貴重な税金の使い道として議会や市民向けに説明する際にもっとも関心の強い事項です。

この議論を予算編成に先立って前倒しで実施し、夏場にしっかりと議論しておくことで秋以降の予算編成過程での議論にも耐えられ、予算案を上程する議会の場、あるいは予算計上後に市民に対して説明していく場面でも、理解を得ながら進めていくことができるのです。

調べものもお忘れなく

予算編成が始まる秋までに行うことは政策議論の前倒しだけではありません。

事業が抱える課題そのものを確認すること、事業が目指すありたい姿の解像度を高めるために市民等のニーズを把握することなど、時間をかけて調査分析を行い、事業構築に活用することで予算編成過程でも議論を有利に進められます。

また、事業の手法検討や、効果の事前推測を目的に他の先進事例を把握することも、内外での説得力を増す効果があります。

一方、技術革新は日進月歩であり、他の先進事例を模倣してもそのものが陳腐化してしまう恐れもあるため、世の中のトレンドや技術革新に関する情報のキャッチアップは秋までに行っておくべき重要な作業だと思います。

秋に向けた政策議論の前倒しと事業構築、そのために必要な調査分析。

それが、予算編成を制するために必要な「夏を制する」ポイントです。

 

本記事の執筆者
今村 寛(福岡市職員)
財政課長時代に培った知見を軸に出張財政出前講座を全国で展開し約10年間で220回を数える傍ら、市職員有志によるオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰。「対立を対話で乗り越える」を合言葉に、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。著書/ 『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと? 』(ぎょうせい),『「対話」で変える公務員の仕事~ 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』( 公職研)。

 


 

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多くの企業様より、

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