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「自治体予算獲得への道」:第4話 誰が予算を決めているのか

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「自治体予算獲得への道」:第4話 誰が予算を決めているのか

2024.08.28

官民連携コラム

目次

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査定権限はひとつじゃない

元・福岡市財政局財政調整課長による自治体の予算編成に関する打ち明け話「自治体予算獲得への道」も今回で4回目。

前回は自治体職員が予算編成時に外部の民間事業者に期待していることを書きましたが、今回はがらりと趣向を変え、自治体内部で予算編成がどのようなプロセスで行われているのかについて、少し詳しく述べていきたいと思います。

第2話・第3話の記事はこちら

自治体予算獲得への道|第2話 夏までに職員がすべきこと

 

自治体予算獲得への道|第3話 役所が民間に期待すること

まずは一口に「予算編成」と言っても現場の担当者の発案どのようなルートを経由して誰が最終判断しているのか、を俯瞰してみます。

予算編成の大まかな流れとして、

①予算執行を行う各課が必要な支出を積算し、事業単位で予算要求調書を作成

②部局単位でとりまとめ

③予算編成を総括する担当課(通常は財政課)で金額や内容を精査し、税収や地方交付税等の収入見込み額との均衡を図るよう調整

④その全体像について首長の判断を仰ぎ、予算案として確定させる

という流れになります。

なのでこのプロセスのそれぞれの場面で、「要るか要らないか」「どのくらい要るか」を判断しており、このうち、担当課以外が金額を精査し要否を判断することを「査定」と呼んでいます。

自治体の予算は首長が案を編成して議会に提出し、議会の議決を得て執行することとなっており、すべての事務事業にかかる経費は予算として計上されなければ執行することはできませんが、すべての事業、経費の詳細について首長の判断を仰いでいるわけではないのです。

経費性質の違い(経常的経費と政策的経費)

自治体の予算編成ではその経費の性質によって、査定までのプロセスが大きく分けて二通りのルートに分かれます。

経常的経費

経常的経費は、人件費や扶助費等の義務的経費、あるいはすでにある施設の運営や毎年行っているイベントや補助金など、すでに決定された施策事業を毎年度同じように実行するためのいわゆるルーティンの経費で、内容に大きな変更を伴わず、その是非について抜本的な議論をしないため、基本的には①各課での積み上げを②部局とりまとめの段階で精査し、③財政課で内容を確認する程度。④首長の判断にまで内容が上がっていくことはありません。

経費の精査も、積算の妥当性や、より低廉なものを選んでいるかという観点に重きが置かれるため、これまでの実績や他の事例との比較など、事実に基づいたチェックが中心の作業になります。

政策的経費

一方、何らかの社会課題に対してその解決のために新たに投じる「政策的経費」については、その必要性や緊急性など、そもそも自治体としてそのようなことをやるべきか否かを議論しなければならないため、③財政課による全体調整が必須となり、そのうち大きなものは④首長の判断するステージに上がっていくことになります。

このため、経常的経費が経費の積算根拠を中心にとしたチェック作業であるのに対して、政策的経費の予算査定では必要性や緊急性、その取り組みの実効性や実現可能性について確認していくことになります。

経費の積算よりも、なぜ取り組むのか、何の役に立つのか、それは実現可能なのか、といったストーリー、ロジックが重要になるのです。

査定権限の違い(一件査定と枠予算)

自治体の予算は多岐にわたり、一つ一つの事業にかかる経費積算をすべて同等に精査するには膨大な時間と労力を要します。

全ての事業の予算要求調書を一件ずつ審査し、経費を精査していくやり方を「一件査定」と言いますが、経常的経費など大きな政策判断を伴わない経費については財政課でこの作業を行わず、各部局にあらかじめ財源を配分し、その枠の中で予算編成を自律的に行う「枠配分予算」という仕組みを採用している自治体もあります。

配分した財源の範囲内であれば財政課がさらに査定を加えることがないため、予算編成権限を委譲し分業することで財政課の負担を減らし、財政課が判断し調整すべき政策的経費の内容精査や財政構造全体の調整に注力できるという予算編成手法です。

一件査定の場合、すべての事業の要否及びその経費の妥当性精査は財政課が行うため、財政課に認めてもらえないと予算が計上できないということになりますが、枠配分予算の場合、各課の予算を取りまとめる部局の長(部長や局長)の権限と責任で予算が計上できるため、現場に近いところでその裁量を働かせることができます。

枠配分予算の仕組みは、単に査定の作業を財政課と各部局で分業するというものではありません。

限られた財源をより効果的に施策事業に反映するには、すべての事務事業の詳細を現場から離れた立場の財政課が独りでチェックし、現場での箸の上げ下げに至る細かい指示を発するというやり方ではなく、市民に近く、市民の声を反映することができる現場で、もっとも効果的な事業実施手法を自分たちで考え、予算の執行だけでなく、現場でのマンパワー投入や市民、地域、関係団体等の協力、連携を得ながらの事業推進など、財政課では手を出すことができない現場での創意工夫を期待する仕組みとして行われるものです。

財政課が判断するのではなく、現場に近いところで判断できる枠配分予算の仕組みについて、多くの方に知っていただき、その良さを活用した予算編成を行っていただきたいなと思います。

首長、議会の力はどこまで及ぶ

民間事業者の方から時々「予算計上には首長や議会の力が必要なのか」という質問を受けるときがあります。

確かに予算編成上、最終的な決裁権は首長にありますし、議会に承認してもらわなければ執行できませんので、予算に計上する施策事業の必要性や内容に関して、首長や議会の理解、協力は不可欠です。

しかしながら、首長にあらかじめ話しておけば予算が付く、とか議員に一言口添えしてもらうと優先順位が高まる、なんて話はありません。

予算編成はあくまでも全体最適を果たすためにパズルのピースをはめていく作業であり、現場や財政課の預かりすらぬところで最初からこの別枠でピースがはまっているというようなことはないのです。

ただし、とても新しい取り組みやトップまだ上がらないと決めきれない大きな話については、首長や議会に事前に情報を提供し、あらかじめ反応を見ておくことは有効です。

その場合は「こういうことを考えているがどう思うか」という打診にとどめ、「これをやりたいので予算をつけてください」というお願いにならないように気を付けてください。

前回書いたように、私たち公務員は特定の民間企業との癒着を疑われるようなことを避ける傾向にありますが、それは首長、議員も同じこと。

「お願いします」ではなく「勉強しましょう」と声をかけ、一緒に現状を把握し、情報交換する中で、自社の新しい取り組み、アイデアを披露し、例えばこういう取り組み(サービス、商品、仕組みなど)を考えていますが、どのようにお感じですか」と意見を聞き、その反応を踏まえて自社商品をブラッシュアップし、現場に提案する、という流れがよいと思います。

その場合、首長、議員に事前に説明したということをあまり現場に強く言うと、それをプレッシャーと感じ、逆にその採用に抵抗感を持つ職員もいますので、あくまでも自社商品の磨き上げの一助として、首長、議員の意見を聞いておくという程度にとどめておいたほうが良いかと思います。

 

本記事の執筆者
今村 寛(福岡市職員)
財政課長時代に培った知見を軸に出張財政出前講座を全国で展開し約10年間で220回を数える傍ら、市職員有志によるオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰。「対立を対話で乗り越える」を合言葉に、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。著書/ 『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと? 』(ぎょうせい),『「対話」で変える公務員の仕事~ 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』( 公職研)。

 


 

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