BtoGとは?意味、方法、仕事を受注するためのコツを網羅的に紹介
BtoGという言葉をご存じでしょうか。
BtoBやBtoCという言葉は知っていても、BtoGは知らない人が大半かもしれません。
BtoGは、国や自治体とのビジネスを指す言葉。
従来では土木や建築分野というイメージでしたが、最近では非常に様々な分野の案件が登場しており、今注目され始めているビジネスモデルなのです。
今回の記事では、新たに国や地方自治体とのビジネスを考えている方や、純粋に「BtoGって何?」と疑問に思っている方に向けて、
- BtoGの意味や方法
- BtoGが注目される理由
- 他のビジネスモデルとの違い
- 仕事を受注するためのコツ
などについて網羅的に解説します。
目次
BtoGとは
BtoGとは、「国や自治体とのビジネス」(Business to Government)のこと。
「ビートゥージー」と読み、「B2G」と表されることもあります。
中央省庁などの国の機関や、都道府県、市町村などの地方自治体、行政法人などを相手方としたビジネスをBtoGと呼びます。
BtoGの仕事内容は多岐にわたる
国や自治体の仕事というと、道路工事や建設工事といった土木建築関係に限られるイメージを持つ方もいるかもしれません。
実際、戦後の復興期からバブル崩壊時あたりまでは、土木建築関係にBtoGビジネスは集中していました。
ただ現在では、土木関係以外にも非常に様々なBtoGビジネスが登場しています。
ある程度のインフラ整備が完了し、住民のニーズが多様化して、自治体が必要とする専門性も多様化したためです。
ペンやパソコンなどの「モノ」のビジネスに加え、コンサルティングやマーケティングといった、「サービス」関係のビジネスが近年は急増しています。
BtoGビジネスの特徴は「入札」
BtoGビジネスがBtoBやBtoCのビジネスモデルと異なるのは、仕事の受注が「入札」で決まるという点です。
通常の営業や契約の流れとは違い、入札では明確で論理的な根拠や価格的な優位性が必要となります。
BtoGビジネスでは、入札の知識を持っているかどうかが成否を分けます。
また、規模の大きさや支払いの確実さもBtoGの特徴といえるでしょう。
国や自治体が相手なので、通常のビジネスよりも規模は大きいことが多いですし、支払いがされないリスクはありません。
ただずっと安定して入札できるとは限らないので、ビジネスとしての安定性には欠けます。
そのため、BtoGのみのビジネスをしている企業は少なく、BtoCやBtoBビジネスの基盤を持ったうえでBtoGに参入する企業が多い状況です。
BtoGが注目される理由とは?
急速に注目を集めているBtoGビジネスですが、なぜ注目されるようになったのでしょうか。
BtoGビジネスが注目されるようになったのは、以下のような理由があります。
理由①地域の課題解決に民間の力が必要とされているため
BtoGビジネスが注目されるようになった大きな理由の1つが、地域の課題解決に民間の力が必要とされるようになった昨今の状況です。
「地方創生」や「官民連携」といったキーワードが盛んに叫ばれるようになった昨今、自治体だけで地域の課題解決を行うのは非常に難しくなっています。
住民のニーズが多様化するに従い、地域の課題も多様化しており、さまざまな形で専門性が求められるようになったためです。
そのため、自治体の発注する入札案件=民間にとってのビジネスチャンスも非常に多様化するようになりました。
今までBtoGビジネスに参入した経験のない企業でも、参入できるような入札案件が増えてきたのです。
官民連携については、こちらもご一読ください。
官民連携とは?手法、背景、今後の見通し、具体例などについて紹介|自治体ビジネスドットコム
理由②民間にとっても魅力的なビジネスのため
また、民間にとってもBtoGビジネスは大きなチャンスを秘めているといえます。
- 地域の課題は全国的な課題でもあり、ある自治体の実績を他の自治体でも展開することができる
- 自治体は過去の実績を重視するため、一度経験を積めば継続的な受注も見込める
- 支払いの不履行は絶対にない
このような理由から、BtoGビジネスは民間にとっても魅力的なビジネスとして認識が広がりつつあるのです。
理由③中小企業にもチャンスがあるため
BtoGビジネスでは中小企業にも平等にチャンスがあり、会社規模に関わらず戦いやすいのが魅力です。
BtoGビジネスは「入札」で取引相手を選びます。
「入札」は公平性と透明性に優れており、一定の資格を満たせば平等に参加資格が得られます。
スタートアップ企業やベンチャー企業であっても実績を作りやすいため、幅広い規模の企業が注目するようになってきています。
BtoG以外の代表的な取引形態との違い
BtoG以外のビジネスモデルも、基本として押さえておきましょう。
代表的な取引形態を紹介します。
BtoC:企業と消費者の取引
BtoCとは、企業と消費者の取引(Business to Customer)のことです。
私たちが消費者として利用する商品やサービスはすべてBtoCの取引です。
BtoCの取引では、イメージやブランディングが非常に重要です。
消費者の購買意欲は、理屈よりも感情や雰囲気で左右されるためです。
消費者の購買意欲をかきたてるために、企業はさまざまな形で工夫をこらします。
広告を出したり、プロモーションを行ったり、商品自体のイメージを高めたりといった工夫をし、「買いたい!」と思うようにしなければなりません。
BtoB:企業同士の取引
BtoBは企業間の取引(Business to Business)のことです。
メーカーに材料を卸したり、企業相手に事務用品や日用品を販売したりといった取引を指します。
BtoBビジネスでは、BtoCビジネスよりも感情的インセンティブが入りにくく、合理的な説得力が必要なのが特徴です。
BtoE:企業と従業員の取引
BtoEは企業と従業員の取引(Business to Employee)のことです。
福利厚生の一環として提供される場合もあります。
自社や他社の従業員に向けたサービスで、社食やオフィス向けの軽食サービス、ケータリングサービスなどが具体的な例です。
CtoC:消費者同士の取引
CtoCは消費者同士の取引(Customer to Customer)のことです。
フリーマーケットやフリマアプリでの個人間売買などをさします。
ビジネスモデルとしてはBtoCに近いものです。
フリマアプリの普及により、近年非常に盛り上がりを見せている取引形態です。
GtoC:行政国や自治体と消費者の取引
GtoCとは、国や自治体と消費者の取引(Government to Customer)のことです。
住民票、パスポート、戸籍謄本などの申請といった、行政のサービス全般をさします。
BtoGの取引方法は3種類
BtoGが他のビジネスと違うのは入札で受注が決まる点ですが、入札には大きく分けて3つの種類があります。
①一般競争入札
一般競争入札とは、参加する事業者を広く募集して行う入札方法です。
最も広く門戸が開かれている方法で、特に緊急性や条件がなければ、原則として一般競争入札を行うことになっています。
入札への参加資格審査をクリアすれば、未経験でも入札に参加できます。
BtoGビジネスに参入したいのならばまず一般競争入札をチェックしましょう。
一般競争入札による落札者の選定方式には、最低価格を提出した事業者を採用する「最低価格落札方式」と、価格と内容を元に総合的に判断する「総合評価方式」の2種類があります。
一般競争入札については、こちらもご一読ください。
一般競争入札とは?わかりやすく徹底解説|自治体ビジネスドットコム
②指名競争入札
国や自治体が入札に参加する企業事業者を指名して行うのが、指名競争入札です。
水準が確保された事業者のみの参加となるため、国や自治体にとってはリスクが少ない方法です。
取引実績や信頼性などをチェックして指名を行うため、入札経験のない企業や知名度の低い中小企業は不利になります。
また公平性と透明性に欠け、談合や癒着などのおそれが出てくるため、指名競争入札が採用できる条件が法令で決められています。
指名競争入札が採用できる条件 ✔︎ 契約の性質・目的が一般競争入札に適さない場合 ✔︎ 契約の性質・目的により、入札に参加する事業者が少ない場合 ✔︎ 一般競争入札にすることが不利と認められる場合(地方自治法第234条第2項、地方自治法施行令第167条) |
指名競争入札の落札者の選定方式は、一般競争入札と同様に、「最低価格落札方式」と「総合評価方式」の2種類です。
指名競争入札については、こちらもご一読ください。
指名競争入札のメリットとは?わかりやすく解説します!|自治体ビジネスドットコム!
③随意契約
入札を行わず、国や自治体が事業者を指名して選ぶ方法をが随意契約です。
随意契約は任意で発注先を選ぶので、時間的にも事務的にも負担が少なく、事業者の水準も比較的高いレベルを見込めますが、公平性や透明性には欠けます。
そのため、随意契約を行うのは限定されたケースのみです。
具体的には下記のようなケースで随意契約が行われます。
随意契約が採用できる条件 ✔︎ 予定価格があらかじめ決められた金額以下である場合 ✔︎ 契約の性質・目的が、競争入札に適さない場合 ✔︎ 特定の施設と契約を結ぶ場合 ✔︎ 新規事業分野の特定企業と新規事業分野に関わる契約を結ぶ場合 ✔︎ 緊急性が高く、競争入札ができない場合 ✔︎ 競争入札にすることが不利と認められる場合 ✔︎ 時価に比べて著しく安く契約できる場合 ✔︎ 競争入札で入札者や落札者がいない場合 ✔︎ 落札者が契約を結ばない場合 (地方自治法第234条第2項、地方自治法施行令第167条の2第1項) |
競争入札に適さない場合に随意契約の候補者を選定する方法にプロポーザル方式があります。
プロポーザル方式は、複数の事業者による企画提案を審査し、その中から最も優れた提案者を選定する方式です。価格だけでなく、提案内容や事業者の信頼性なども含めて総合的に判断する必要がある事業で採用されます。
随意契約やプロポーザル方式については、こちらもご一読ください。
自治体営業における究極のゴール「随意契約」とは?|自治体ビジネスドットコム
プロポーザル方式と入札の違いは? 違いや特徴について解説|自治体ビジネスドットコム
入札の種類については、こちらの記事でも解説しています。
入札方式の種類は?公募方法は?わかりやすく徹底解説!|自治体ビジネスドットコム
BtoG案件の探し方2つ
BtoGビジネスの入札案件を探す方法には、大きく分けて2種類の方法があります。
- 自治体ホームページから探す
- 民間の入札情報サービスを利用する
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
自治体ホームページから探す
自治体ホームページから探すの方法は、最も費用がかからない案件の探し方です。
入札を行う多くの自治体では、「入札情報」や「調達情報」といったページで公募情報を随時公開しています。
ひとまず自社のある自治体で入札に挑戦してみようと考えている場合や、どんな入札案件があるのか見てみたい場合は、各自治体ホームページからチェックしてみるとよいでしょう。
ただ、個々に自治体ホームページをチェックしていくのは、膨大な手間と労力がかかります。
- 全国的にBtoGビジネスを展開していきたい
- 入札案件探しに手間や時間をかけられない
- より多くの自治体の入札案件を随時チェックしたい
こうした企業の場合は、後述する民間の入札情報サービスをチェックするのがおすすめです。
民間の入札情報サービスを利用する
より効率的に入札案件を探したい場合は、民間の入札情報サービスを活用するのがおすすめです。
利用料がかかるのが難点ですが、担当者の手間を大幅に削減してくれますし、ねらい目の案件を探しやすくしてくれるため、結果的に受注につながりやすくなります。
上手に使えば、高い費用対効果が得られるツールです。
BtoGで仕事を受注するためのポイント
規模の大きさや支払いの確実さなどから、BtoGビジネスへ参入したいと考えている企業も多いのではないでしょうか。
特に最近では、「地方創生」が叫ばれており、民間企業の力が特に必要とされています。
大手企業に限らず、中小企業やベンチャー企業にも参入のチャンスはおおいにあるのです。
とはいえ、通常のビジネスとは様々な点で違いのあるBtoGビジネスは、簡単に参入できるものでもありません。
BtoGビジネスで仕事を受注するためのポイントについて紹介します。
「知ること」の重要性
BtoGビジネスで最も重要なのは「知ること」です。
技術力でも、交渉力でも、価格力でも、企業規模や知名度でもありません。
ただ実際のところ、企業規模が関係ないとはいえ、受注したり名前が出たりする機会が多いのはやはり大手企業。
それはなぜでしょうか?
大手企業は高度経済成長期に国や自治体とビジネスをした経験を持っているため、自治体とどうビジネスをすればいいかを「知っている」からです。
逆に言えば、中小企業やベンチャー企業でも「知る」ことで互角に戦えるようになります。
知るべきは以下の3点です。
ポイント①組織目的とキーマン
まず押さえるべきなのは、取引相手である自治体の「組織目的」と「キーマン」です。
一般的に、民間企業では「自社のために利益をあげること」を組織目的としています。
一方、自治体の組織目的は「地域の課題解決=税として預かったお金の効果を最大化すること」です。
ビジネスの際には相手方のメリットを訴求しますが、BtoGビジネスでは地域の課題を解決できるのかを考える必要があります。
また、通常のビジネスだとキーマンは組織のトップや代表者であることが多いですが、BtoGビジネスでは違います。
自治体のトップは首長(市長、知事)ですが、首長はBtoGビジネスのキーマンではありません。
BtoGビジネスのキーマンは企業の商品やサービスを発注する部署の課長です。
そこを見極めないと、情報収集も営業もうまくいきません。
自治体アプローチのポイントについては、こちらもご一読ください。
地方自治体へ営業!知っておきたい基礎知識と自治体営業のコツを解説!|自治体ビジネスドットコム
ポイント②民間委託のプロセス
続いて押さえるべきが「自治体がどのようにして発注先を選ぶのか」のプロセスです。
自治体は年度で動いており、予算編成や事業の発注において、どの時期に何をするかが決まっています。
そのため、アプローチの時期を間違えると、時すでに遅し、来年度でないと間に合わない…ということになりかねないのです。
BtoGビジネスでは、予算編成や発注プロセスの流れに沿ったタイミングでアプローチをすることが営業活動のポイントとなります。
自治体の予算編成スケジュールについては、こちらもご一読ください。
自治体の予算取りのスケジュールとは?民間企業との違いや流れを徹底解説|自治体ビジネスドットコム
ポイント③案件の獲得方法
最後に、実際にどうすれば案件を獲得できるのかを考えるのが3つ目のポイントです。
BtoGビジネスでは、公平に発注者を選定するために競争入札やプロポーザルが実施されます。どんなに良い商品やサービスであっても、決められた方式を経て発注先として選定されなければ、案件を獲得することはできません。
案件を獲得するためには、どの選定方式であっても、発注者のニーズとともに競合他社の動向を分析し、戦略的に取り組むことが重要になります。
競争入札やプロポーザルの戦い方については、こちらもご一読ください。
自治体から評価されるプロポーザルの戦い方【10のステップ】|自治体ビジネスドットコム
BtoGビジネスは将来性のある取引方法ビジネスモデル
今回の記事では、BtoGビジネスの意味や概略について解説しました。
主なポイントは以下の3点です。
- BtoGは国や自治体を取引相手とするビジネスで、業務の内容は多岐にわたる
- BtoGビジネスは企業にとってもうまみのあるビジネスであり、注目を集めている
- BtoGビジネスで仕事を受注するためのポイントは「知ること」
BtoGビジネスに興味がある方は参考にしてみてください。
LGブレイクスルーでは、知識や情報を「研修」という手法で、組織体制やマネジメントの課題を「コンサルティング」で解決し、入札やプロポーザルの勝率向上を「標準化可能なノウハウ」で、企業様が抱える自治体との関係構築の課題解決に貢献しています。
自社だけで解決するのが難しい、自治体との関係構築の「わからない」「できない」「結果が出ない」を、「わかる」「できる」「結果がでる」組織への変容をサポートしています。